投資信託を買おうとしている個人の立場に立って書かれた本、『投資信託にだまされるな![新版]』の著者、フィナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さんと『投資信託は、この8本から選びなさい。』の著者、セゾン投信社長の中野晴啓さんの対談もいよいよ3回目。
  今回は日本の投資信託業界の問題点やウラ事情をバッサリ斬ります! しかし、ここまで辛口に言えるのは、お二人とも、本当は投資信託に深い愛情があるからなのです。

日本とアメリカで売れている投資信託を、比較してみると
特徴や運用期間がまったく正反対だった

中野 私の会社、セゾン投信は直接販売といって、銀行や証券会社などの販売金融機関を通さずに投資信託をお客様に直に販売していますから、ネットや電話を通じてアクセスしていただいた時点で、すでにその方はセゾン投信の投資信託が欲しいということなのですが、販売金融機関の窓口に行くと、いろいろな投資信託会社が運用する、さまざまな投資信託があるので、なかなか選ぶのが難しいですよね。

竹川 これを買おう、と決めていないと、それこそ販売金融機関が勧める投資信託を買ってしまいがちですよね。この対談の1回目に数字を出しましたが、投資信託を購入したきっかけを尋ねられて58%もの人たちが、「証券会社や銀行等の人から勧められて」と答えています。

中野 販売金融機関は新しい投資信託ばかり買わせたがりますから、結果的に個人は運用実績が揃っていない、したがってリスクがどのくらいあるのかも分からずに、投資信託を買ってしまったり、さらに商品の中身を理解しないままに買っているという方も多そうです。

 ちょっと古いデータで恐縮ですが、私が6月に出した本の中で、今年1月末時点で、米国と日本の純資産残高上位10本の投資信託を比較したんです。ちょっと面白い事実が見えてきましたよ。

竹川 それはどういうものですか?

中野 米国でトップの純資産残高を持っている投資信託は、いわば、いちばん売れている投資信託と言っていいと思うのですが、「アメリカン・ファンズ・グロース・ファンド・オブ・アメリカ」というものです。この投資信託の運用開始日は1973年11月30日。設定から約40年が経過しています。それも含めて、運用開始から40年以上が経過している投資信託が、10本中4本もあり、中には77年という投資信託もあります。こちらは、77年の平均利回りが12%を超えているんですよね。

 では、日本はどうかというと、トップは「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」で、このファンドは運用開始から14年が経過しているわけですが、それ以外の10本中9本はすべて運用開始から10年未満なんですよ。ちなみに2位の「野村グローバル・ハイ・イールド債券投信(資源国通貨コース)」に至っては、運用開始から1年しか経過していない。