アメリカの投資信託を運用する投資信託会社は、みんなキャラが立っていて個性的!

竹川美奈子(たけかわ みなこ) ファイナンシャル・ジャーナリスト。LIFE MAP,LLC代表。出版社や新聞社勤務などを経て独立。99年ファイナンシャルプランナー資格取得。新聞や雑誌などを中心に執筆活動を行ういっぽう、投 資信託やETF、確定拠出年金セミナーなどの講師を務める。
公式サイト http://www.m-takekawa.jp/ 個人ツイッター http://twitter.com/minakotakekawa

竹川 しかもこのアメリカの投資信託は、オーソドックスなタイプが上位に来ていますね。これも日本には見られない特徴のひとつだと思います。

中野 確かに、日本で人気のあるファンドの商品性を見ていくと、たとえば「豪ドルの短期債に投資する」、「ブラジルの債券に投資する」、あるいは「新興国の株式に投資する」というように、かなり投資対象が限定されたファンドが多いですね。

 これに対して米国の場合は、株式型でもせいぜいグロースかバリューかという銘柄選択基準の違いがある程度で、ざっくり言えば、単なる株式型、あるいはさまざまな資産に分散投資するタイプというように、オーソドックスなファンドが上位を占めています。

竹川 この違いって、どこから生じてくるものなのかと考えると、ひとつに運用会社の“キャラ”が立っているかどうかというのが、あるように思えます。

中野 確かにキャラってありますよね! たとえばフィデリティなら徹底した企業リサーチを中心にして銘柄を選ぶ株式型が中心だし、バンガードならインデックス運用が中心ですよね。

竹川 そうなんですよ。でも、日本の投資信託会社って、キャラが全然立っていないじゃないですか。独立系の運用会社や一部の外資系運用会社は別にしても、他の投資信託会社が運用しているファンドの商品ラインナップを見ると、どれも似たり寄ったりですよね。

 しかも、どのような運用が得意かということが全くわからなくて、とりあえずすべてのタイプのファンドを取り揃えているというように、まったく顔が見えてきません。これでは、投資家もどういう視点で作り手を選べばよいのか、迷ってしまうのも当然だと思います。

中野晴啓(なかの はるひろ) セゾン投信株式会社 代表取締役社長 公益財団法人セゾン文化財団理事、NPO法人元気な日本を作る会 情報発信局長。1963年東京生まれ。大学卒業後現クレディセゾン入社、債券を中心に資金運用に従事。2006年セゾン投信(株)を設立、2007年4月 より現職。著書に『運用のプロが教える草食系投資』(共著:日本経済新聞出版社)、『積立王子の毎月5000円からはじめる投資入門』(中経出版)などが ある。
セゾン投信 HP http://www.saison-am.co.jp/ 個人ツイッター http://twitter.com/halu04

中野 本当にそうですね。

竹川 たとえばパソコンを買う時って、皆、自分のお気に入りのメーカーがあったり、ほしい機能を比較したりしてから、その次にじゃあどこのお店で買おうかということになりますよね。

 でも投資信託の場合は逆で、まず「ヤ○ダ電機で買おう!」とか「××カメラで買おう!」とお店に行って、「今売れているものはなんですか?」と聞いて、それで、勧められた冷蔵庫か、テレビか、それとも掃除機を買おうか…と考えるようなイメージだと思います。メーカーなどもぜんぜん気にしないわけです。メーカーに特徴がないからというのもあるのですが、それってちょっと変ですよね。

 この間も、「A銀行のファンドを買いました」という方がいらっしゃったのですが、正確には、そのA銀行で販売されている投資信託を買ったわけであって、そのA銀行が運用しているファンドを買ったわけではありません。つまり、投資信託を運用している投資信託会社の存在を知らない人がとても多いということなんですね。

中野 実は日本の場合、投資信託会社のステイタスが、販売金融機関に比べて非常に低いという特徴があります。いろいろな投資信託会社はありますが、大半は銀行や証券会社など販売金融機関の系列の子会社というところばかりです。だから、投資信託会社の人事を見ても、運用部門の統括責任者が、その前は系列の販売金融機関の営業責任者だったりする。ずっと営業畑で来た人が、運用のことも知らないのに、いきなり投資信託会社の運用部門の「責任者」になってしまうのですから、何をかいわんや、ですよ。これが日本の投資信託会社の実態です。