純潔を売りにした疑似恋愛は
こじれればストーカーにつながる

 そう考えていくと、なぜ女性アイドルが「恋愛禁止」なのかという理由がハッキリと見えてくる。

 ファンは自分の好きなものを我慢して、コツコツとお金をためて握手会や総選挙に行くためのCDやグッズを山ほど購入する。なぜこのような我が身を削る「戦い」をおこなっているのかというと、すべては愛する女性の夢を叶えるため。そう、愛する「推しメン」のためである。

 自分たちがこんなにストイックな戦いを強いられているのだから当然、「銃後の女性」もストイックに「純潔」を守るのが当たり前――。そんな「固定観念」が日本社会で成長していると、気づかぬうちにいつの間にやら刷り込まれてしまっているのだ。

 だから、日本のアイドルファンは、アイドルに自分たちと同じようなストイックさと、その苦労によってもたらされる「孤独さ」を強いる。その象徴が「恋愛禁止」である。

 にもかかわらず、須藤さんはあっさりとその苦労をすることを放棄してしまった。だから、「裏切り者」として本来は彼女の「夢」を応援してきたという「ファン」からひときわ激しい憎悪を抱かれてしまっているのである。

 AKBがここまで大成功した要因はさまざまあるが、ひとつには日本の男たちが根っこのところで持っている「銃後の妻」のような「純潔」を、「恋愛禁止」という暗黙のルールで組織のガバナンスに活用したことで、「見える化」したことが大きいと思っている。

 ただ、そのような「純潔」を売りにした弊害も確実にあらわれている。

 アーティスト活動をしている女性に一方的な思いを抱き、一方的に裏切られたと怒り襲撃するようなファンや、GPSを忍び込ませたプレゼントを渡すファンなど、「純潔信仰」をこじらせた「テロ」が続発している。