足元で「円高」が続いています。これは米ドル、ユーロともに債務不安を抱える中での消去法的な「円買い」との説明もあるようです。
ただ、国の信用を示す指標を見ると「米国>欧州>日本」となっており、かなり違和感のあるところではないでしょうか?
信用リスクが欧米より高いのに、円が買われている
国別のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)指数はその国の信用を示す代表的な指標ですが、それは現在、「米国>欧州>日本」となっています。
「資料1」をご覧ください。日本のCDS指数は3月の大震災後に急速に悪化し、その後は徐々に回復してきたものの、それでもこのところの財政不安から急速に悪化してきた欧州と比べても、基本的には日本の信用リスクが高い状況が続いているのです。
資料1
一般的には、リスク回避局面では円が買われやすいとされますが、これはリスク選好局面で、低コストで調達できる円を売って投資する「円キャリー取引」が広がりやすく、その修正と考えればとりあえずのつじつまは合います。
しかし、「資料2」のように、最近の投機筋のポジションは、すでに「円買い」に傾斜しているようです。
資料2
リスク選好で「円キャリー」と呼ばれる「円売り」に傾斜したままなら、リスク回避で円が買い戻されるという説明は、わからなくもないです。
逆に、すでに「円買い」に傾斜している中で、欧米よりも信用リスクの高い円をさらに買うことになるのでしょうか?
世界一の低金利通貨である円が、それでも安全資産として買われる大前提は、貿易黒字国通貨ということでした。ところが震災後は、貿易収支が一時赤字に転落するなど、その大前提は揺らぎつつあります。
以上のように見てくると、消去法的にも、リスク回避としても、それが「円買い」になるかは微妙なだけに、その持続力はこれから試練を迎えるのではないでしょうか?
8月は「QE3」実施の有無を見極めたいところ
ただ、世界一の低金利通貨で、貿易黒字通貨ということすら揺らぎつつあり、欧米よりも信用リスクの高い円が、結果として買われています。
それほど、米ドルに「重石」がのしかかったようになっている状況であることは確かです。
そこで、米ドルのとりわけ大きな2つの「重石」について再確認してみたいと思います。