そうして現行の未来型デザインに確定したのが、16年の暮れのことだった。年明けすぐに工事中の店舗を訪問した丸山は、以前のデザインで完成しかけていた店舗を目の当たりにし、「ここまで工事が進んでいるのか」と、後ろ髪を引かれる思いに駆られたという。

 だが、もう引き返すわけにはいかない。そこから、実質2~3カ月の超特急で作業が進み、銀座支店が竣工。そして今年4月、銀座の一等地にふさわしい未来型の店舗がオープンした。

 実際、くだんのペーパーレスの新システムが稼働したのは、オープンの1週間前のことだった。だが、それでも店舗のオープンが遅れることも、職員の理解不足が露呈することもなかった。

 その理由について丸山は、「銀座支店を未来型店舗のフラッグシップ(象徴)にしたいという思いが皆に浸透していたため」と、振り返る。その思いは、「いつしか、チームのみんなが“ギンザ”という言葉を口にしていましたね」という言葉に表れている。

 ここであらためて、「未来の銀行の店舗はどんな姿か」という最初の問いに立ち返ろう。口座の開設や振り込みが、インターネット上で完結できるこの時代に、わざわざ店舗へと足を運ぶ必要性は希薄化しているといえる。

 そうした中で、店舗の強みは、資産運用や相続など、窓口でしか相談できないようなデリケートな業務に人員を割けることにある。そのためのツールが、ペーパーレス化というわけだ。そのため、「対面型」や「寄り添い型」と呼ばれる個別の応対スペースを設置。後者では、職員が顧客の横に座って話をすることができる。いずれも顧客と近距離で話すことに最適化された空間だ。

 つまり、人と場所を整えることによって、銀座支店は、店舗にわざわざ足を運ぶ意味を生み出した、未来型の店舗といえる。

 丸山は「全国約430店舗のうち100店舗を移転し、銀座をモデルにして造り替えたい」と、すでに次の未来図を描き始めている。(敬称略)

(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)

【開発メモ】未来型店舗
 大規模商業施設「ギンザ シックス」に誕生した三井住友銀行の銀座支店。ペーパーレスの窓口や、職員と顧客が隣同士に座って相談できる「寄り添い型」の応対スペースなど、他の店舗で部分的に導入されていた仕組みを盛り込んだ最先端の店舗だ。受付にはロビー責任者と呼ばれる案内人がいて、最適な窓口へ誘導してくれるのも特徴の一つ。

銀行なのに伝票がない!三井住友・銀座支店の先進性