>>(上)より続く

 たたでさえ結婚を喜んでくれた両親をこのような形で裏切ってしまった上に、支度金まで奪われたとなれば、ますます両親を落胆させるに違いありません。だから理恵さんは「はい、そうですか」と返事をするわけにはいかなかったのです。

 さらに今回の場合、結婚式、披露宴、新婚旅行を取りやめたので30万円近いキャンセル料が発生し、貯金を使い込まれてしまった理恵さんは支払うことができず、両親にお金を借りることになりました。

 もちろん、理恵さんは彼や彼の実家も一部を負担すべきだと考えていたのですが、いかんせん、彼は決して高いとは言えない地方公務員の稼ぎしかなく、さらに金銭感覚が抜け落ちたギャンブラー。相手の両親も見て見ぬふりをする自由放任主義なので、当事者同士の話し合いは遅々として進まず、調停(家庭裁判所での仲裁)に持ち込まざるを得なかったのです。

 結局のところ、婚約を解消してから「相手方が15万円を払う」という形で決着するまで8ヵ月を要したのですが、一方で同棲の期間はわずか6ヵ月。仲睦まじい時間より、険悪でいがみ合っている時間の方が長いのですから、本当にあべこべです。

子どもは中絶
その後、摂食障害や不眠症に

 ところで理恵さんに突きつけられたのはお金の問題、気持ちの問題だけではなく、同時に命の問題も抱えていました。理恵さんが事務所に来たときにはすでに妊娠3ヵ月。私が何より心配したのは身ごもっている胎児のことです。

 私は「1人で育てていく選択肢もある」とアドバイスしましたが、理恵さんの気持ちは決まっているようで、私が何を言おうと考えは変わりませんでした。それから1週間後、理恵さんは病院で中絶手術を受けました。やはり、嫌いな男性の子どもを産み、育てていく気にはなれなかったようです。結局のところ、命の問題についても最悪の結果を迎えました。