がん治療での遺伝子検査を保険適用か、医療財政破綻の懸念もパネル検査で得られた遺伝子情報を国の機関に集積し、がん研究の推進を目指すという Photo by Seiko Nomura

 6月末、厚生労働省は、がんに関連する複数の遺伝子異常を一括で調べる「パネル検査」について、2018年度中に公的保険適用を目指す方針であることが分かった。

 なぜ、がんの治療で遺伝子情報を調べる必要があるのか。「分子標的薬」という薬を選ぶためだ。

 従来の抗がん剤が全てのがん細胞を満遍なく攻撃するのに対し、分子標的薬はミサイルのごとく特定の遺伝子異常を狙う。従来の抗がん剤より強力な効果を発揮するが、薬ごとにターゲットとなる遺伝子異常が異なるため、患者のがんにどのような遺伝子異常があるのかを検査し、適切な分子標的薬を選択する必要がある。

 現状で保険適用なのは、肺がんのEGFR遺伝子など、単一の遺伝子の異常のみを調べる検査。がん種によっては、遺伝子検査自体が保険適用外の場合もある。

 パネル検査は、100以上の遺伝子の異常を一括で調べることができる。現在は、患者が全額自己負担する自由診療で、費用は約60万~100万円と高額。実施する医療機関も少なく、全てのがん患者がその恩恵を受けることは困難だった。