自分の思いを込められる
玩具デザイナーに転職

 そんな大西が次に門をたたいたのが、電機業界でも自動車業界でもなく、玩具業界だった。

「ものづくりの本質は、誰がどんな場面で、どういった目的でそれを使うのかを思い描きながら、商品を通じて何を伝えたいかを考えること。玩具はヒットすれば社会現象になるほど大きな影響力と夢がある。家電や自動車と比べて、より自分の思いを商品に込められるところに魅力を感じた」。こうして大西は27歳でタカラトミーに入社し、トランスフォーマーのデザインに携わるようになった。

 最初に担当したのはジェット機から変形する「スタースクリーム」というキャラクター。「いったいどうやって設計するんだろう」。デザインを学び続けてきた大西でも、全く経験したことのない未知の領域に悪戦苦闘した。

 トランスフォーマーが他のロボットフィギュアと全く異なるのは、100以上あるパーツを一つも取り外すことなく、引っ張る、回す、折り曲げるなどして変形させる点にある。映画スタジオから送られてくる資料は最終形である車とロボットの姿だけ。この間の変形プロセスに関わるギミック、パーツ設計、素材や金型に関するコストまで考えるのが大西の仕事だ。

 一つの商品に対して多いときは一晩で50ものアイデアを紙に描き、イメージを膨らませ、最終プランに落とし込んでいく。とにかく試行錯誤の毎日だ。実写映画化以降は、より人間に近い複雑な顔のつくりになるなど、開発のハードルはどんどん高くなっている。

 トランスフォーマーは多彩なキャラクターをベースに、変形の難易度や対象年齢、価格帯などから複数のシリーズを展開し、累計3000種類もの商品を世に送り出してきた。大西は年間20種類ほどの新商品を担当する。先人が作ったフィギュアに今風のアレンジを取り入れ、新しいものを生み出す。

 そんな中で大切にしているのは、ファンの意見に耳を傾けることだ。ネット上には世界中のファンからたくさんのレビューが投稿される。ファンの期待を超えられなかったこともあれば、苦労して世に送り出した商品に対して、「超絶クール! こんな商品を待ち望んでいたよ」などと書かれることもある。ファンの口コミはアイデアとモチベーションの源泉となっている。

 そして開発段階ではデザイナー全員で、おのおののプランに対して批評し合うチームレビューを4~5回行う。「深夜まで考えたギミックに駄目出しされるとさすがにへこむ」が、徹底的に議論するのは、チーム全員が高い完成度を目指しているからに他ならない。