先日、個人投資家向けの少人数の勉強会に参加した際、個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)の始め方について参加者の方々が議論をしていたのですが、その参加者のほとんどは、iDeCoをどのように始めればいいのか、まったくわからない状態でした。おそらくオヤジ世代の皆さんにもこのような壁にぶち当たっている人は多いのではないかと思います。そこで今回は、iDeCoをやってみようと思っているけど、どのように始めればよいのかわからないオヤジ世代に向けて、iDeCoを始めるための意思決定プロセスについてお話しします。
金融機関を決める前にしなければならないのは…
その議論の中で私が最も驚いたのは、最初に金融機関(iDeCoの場合は、運営管理機関。以下同じ)を選ぼうとしている方が非常に多かったことです。でもこれって変ですよね? 例えば、家を建てる場合を考えてみてください。通常は、最初にどのような家を建てたいのか、少なくとも和風なのか洋風なのかくらいのイメージは持つと思います。建築士と一緒に考えるか、ハウスメーカーにある程度お任せするのか、といった判断も最初にすると思います。そこまでイメージができてからどこの業者にすべきか、比較検討することが通常だと思いませんか? 老後の資産形成もまったく同じで、まずはどのような資産形成をしたいかをイメージするのが最初のステップになります。
その際、退職後の生活をイメージし、その生活水準に必要な額(月額)を想定することが第一歩です。同時に公的年金や企業年金からいくら受給できるのかも把握します。その差額が毎月の不足額であり、それに亡くなるまでの期間を掛ければ、退職後の生活に必要な金額となります。当連載でしつこく申し上げているように、今は老後の期間が65歳以降30年以上続くことは特別なことではないので、老後30年を想定して計算することをおススメします。生命保険文化センターが平成28 年度に実施した「生活保障に関する調査」では、ゆとりある老後を送るための生活費は約35万円、夫婦二人が受け取る公的年金の平均額が約22万円ですので、差額の13万円が毎月の不足額となります。単純計算ですが、この不足額の30年分は4680万円になります。