起訴されれば有罪率は99%以上といった情報を、痴漢冤罪を経験した当事者や弁護士がテレビなどで語り、「痴漢に間違えられたら立ち去る」「逃げること」といったアドバイスや情報が流布している。

「痴漢をされました」「この人、痴漢です」と駅事務室に連れて行かれると、現行犯逮捕と見なされてしまうことがある。警察官など司法警察職員に限らず一般人でも、30万円以下の罰金、拘留、科料にあたる罪で、犯人の住居、氏名が明らかでなく、または犯人が逃亡するおそれがある場合は、逮捕状がなくても現行犯人の逮捕を行うことができるためだ(刑事訴訟法213条)。

 私人逮捕、常人逮捕と呼ばれているもので、私人が逮捕を行った場合は、直ちに検察官、または司法警察職員に引き渡さなければならないと定められている(刑事訴訟法214条)。

 痴漢と疑われた人が被害者と駅事務室、交番に行ってしまうと、そのまま警察署に連行され逮捕、送検、勾留という流れになる可能性があり、「立ち去れ」「逃げなさい」というアドバイスの根拠になっている。

 痴漢と疑われて逃走し、死者が出る事件が2件続いた。5月12日、JR京浜東北線の上野駅から痴漢の疑いをかけられ改札から逃走後、近くの雑居ビルから転落して死亡する事件があり、3日後の15日に東急田園都市線の青葉台駅で、痴漢の疑いをかけられた男性が線路に飛び降り、入ってきた電車にはねられて死亡。線路に逃走するケースで、初めての死者が出たのだ。

 同線は午後8時14分から9時59分まで電車が止まり、約2万3000人に影響が出たが、東急電鉄は亡くなった男性の遺族に損害賠償を求めていない。今後どうするかは決まっておらず、個別の損害賠償請求については公表しない考えだ。

 死亡事件が起きた後も、痴漢と疑われた人が、5月にJR京浜東北線川口駅とJR埼京線新宿駅で線路を逃走し、6月にもJR埼京線赤羽駅で同様の事案が起きている。

「逃げるべきだったのかもしれない」と語る
痴漢冤罪の被害者

 逃げるべきなのか、その場で無実を訴えるべきなのか――。

 実は、「週刊ダイヤモンド」2005年8月27日号で「トラブル対処法50」という特集を掲載し、仕事や日常生活でのトラブルにどう対応したらいいのか、50のテーマについて専門家の取材を基に解決法を提示した。