前回の「女性客にまで暴行されるコンビニ店員の“悶える格差”」 は、読者諸氏から大きな反響を得た。このケースのように、我々は街中でふと、普段はうかがい知れない「悶える職場」の一断面を目にし、その課題を深く考えさせられることがある。

 そのつながりで、今回は少々趣向を変え、「通勤電車」をテーマに取り上げたい。会社員が毎朝乗る通勤電車も、ある意味で職場の延長線上にある。そこでは、職場でストレスを抱え込んでいるであろう「悶える男性社員」によって、人知れず深刻な事件が引き起こされている。

 その1つが、痴漢やストーカー行為である。痴漢行為については、筆者は以前、実際の現場を目撃したことがあるが、前述の「コンビニ暴力事件」のときのように、警察に通報することはできなかった。

 なぜ会社員は、異常な行為に走ることがあるのか。そしてその背景には、企業社会が抱えるどんな課題が横たわっているのだろうか。

 読者諸氏も、一緒に考えてみてほしい。


筆者はなぜ勇気を出せなかったか?
満員電車で偶然遭遇した痴漢の現場

 春が訪れた。この時期になると、思い起こすことがある。2年前の4月、筆者は満員電車の中で、いわゆる「痴漢」を目撃した。

 男性の右手の指が、女子高生の左の胸にくっついていたのだ。あまりにも大胆であり、驚きで声を出すことができなかった。

 筆者は今でも罪悪感を感じているが、いざこうした光景に出くわすと、どうしたらよいかわからず、大きな声を出して痴漢をたしなめるなど、被害者を助ける行動はできなかった。また、満員電車の中だったこともあり、前回の記事のように警察に通報することもできなかった。