(1)部下は、少し型破りなアイディアを思いついても、どうせ話を聞いてもらえないなら相談する意味はないと感じるようになる
(2)部下は、経験豊富な上司にかなうわけがないので、自分自身であれこれ考えたところで仕方がないと考える癖がつく
(1)なら特定の上司部下の関係性を機能不全にするだけで済みますが、(2)だと部下のキャリアをつぶしかねません。上司がすべきことのポイントは、部下の判断が間違っていると感じつつも、まず先に「部下がなぜそう考えたのか」を明らかにすることにあります。
指示するのは、たいてい後でも間に合います。部下に事情を話してもらうのに、実際1分かからないでしょう。つまり、「ああ、だからそう考えたわけね」と理解するまで付き合えるだけの余裕があるかどうかが、部下を育てられるか否かの分かれ道になります。
頭ごなしに言わなくても
表情が語ってしまうことがある
もう一度、上の2つの対話例を見比べてください。そして、この後に続く部下の発言や行動の可能性を想像してみてください。
対話例Aでは、もはや部下から返す言葉はありません。したがって何も生まれません。一方で、対話例Bでは、部下が自らの考えを示したり、話しながら次の行動を思い浮かべたりできます。
たった2行のやりとりで、これだけ明らかな差が出てしまいます。日々膨大なやりとりのある職場で、この差が積み重なったらどうなるか、想像するだけでワクワクしてきませんか?
ここで別な視点から説明を加えます。読者の中には「こんな頭ごなしに言ったりはしないよ」と思う方もいるでしょう。しかし、言葉がなくても、表情が語ってしまう場合があります。
文字だけだとわかりにくいですが、対話例のAとBとでは、おそらく上司の表情に違いがあります。
対話例Aの上司は眉間にしわが寄っています。それに対して対話例Bでは、上司は眉が上がって目を見開いています。仮に言葉を発さなかったとしても、部下に伝わるメッセージは AとBとではっきり差が出てしまうのです。