ミュージシャンたちの夜

小野瀬 おかずとしての好物はいろいろありますが、強いて挙げれば、魚の天ぷらが好きです。中でも、まぐろ、あじ。豊野丼はそういうのが出てくる。豊野丼のおじさん、もともと魚屋さんだったので、鮭を揚げるんですが「なかなかうまく揚がんないんだよ」って言いながら、「食べてよ」って勧める(笑)。

野地 食べてみたらうまいんですよね、あれ。

小野瀬 脂っこい魚は、実は油で揚げてもうまい。

野地 北海道の家庭料理では、脂の乗った時知らずの鮭をフライにするのが定番だとか。

小野瀬 そういえば、僕も函館の居酒屋でホッケのフライを食べました。刺身がたくさん出たんですが、覚えているのはホッケのフライ。脂っこいけれど、いいんです。

野地 函館などは、全国ツアーのときに行くわけですね。ところで、ミュージシャンは夜、自由行動してもいいんですか。

小野瀬 バラバラです。打ち上げをやるぞっていう時だけ集まって、普段はバラバラ。(横山)剣さんはお酒飲まないし、お酒飲まないメンバーはお酒飲まない同士で出かける。で、お酒飲むメンバーでも食べないで飲むメンバーはそういう仲間と行く。たとえば、ギターの新宮さんとか、トランペットの澤野君とかは、バーに行っていきなりウイスキー。一度、僕はその二人と飲みに行ったんですけど、途中で、「生ハムかなんか頼んでいい?」って、僕ひとりだけ食べてました。

野地 横山さんってグルメじゃないんですか?

小野瀬 ある意味グルメなんですけどね。でも、コーラが好きで。

野地 一度、一緒にコーラとねぎま鍋を食べたことがありますね。神楽坂の鍋料理の名店「山さき」で。そういえば、僕らの世代、コーラとステーキ、コーラとすき焼き、コーラと焼き肉を組み合わせる人は少なくない。

小野瀬 本当にそうです。特にコーラで焼き肉は結構いましたね。脂にコーラは合いますから。

食べ物のことを書くということ

野地 さて、ブログって週に何回更新とか決めてるのですか?

小野瀬 1日1回必ずアップしてます。1行でも書きます。

野地 小野瀬さんの文章、チャーミングですね。他の人のも読みますか?

小野瀬 たまに読みますが、いいからと言って真似をしようとは思ったことはありません。あと、あんまりおいしくなかったときでも、悪口は書かない。でも、読者にはわかるようです。

野地 おいしくない店って、自分に合わないってことですか。

小野瀬 合わないというか、特に特徴がないというニュアンス。何にも特徴がない店は、原稿を書くときも困ります。  

野地 小野瀬さんのフォロワーって何人くらいいるのですか?

小野瀬 フェイスブックはもうすぐ5000人で、ツイッターもたぶん5000弱ぐらいだと思います。ブログはどうでしょう、反応があるのが2000ぐらいかな。そうそう。で、文章の話といえば、たまたまうちの父親が昔、玉村豊男さんの『料理の四面体』って文庫本を持っていて……。ぱらぱらっと読んだら、おもしろいなあと。文章に目覚めたというか。ハリー・クレッシングの書いた『料理人』(ハヤカワノベルズ)も勉強になりました。後は、『檀流クッキング』(檀一雄著)を読み、池田満寿夫さんの『男の手料理』も読み、内田百間先生が大好きだったから、いくつも読みました。百間先生の本にはたまに食べ物のことが出てきて、なかに「天丼は食べている時はうまいけれど、がっかりする」みたいな文章があって、ああ、この感じが天丼だなあと思ったことあります。