この結果としてシャープは、SDPのパネル負担から解放されて営業損益を改善させた上、出資比率の引き下げでSDPの持分法投資損失も遠ざけた。事実上のグループ内部の損失移転で、鴻海傘下に入ったことで初めて実現した構造改革となった。

 鴻海効果は太陽電池事業でも発揮。グループの交渉力で、08年ごろに結んだ原料のポリシリコンの割高な長期契約を結び直して、101億円の引当金の戻し入れ効果を生んだ。白物家電部門でも、鴻海グループの物流やオペレーションの経費削減が寄与して改善した。

 これに加えて目立ったのは営業外の費用や損失。鴻海傘下の財務改善で、シャープを苦しめてきた支払利息や特別損失の負担は解消されつつある(図(3))。

 短期借り入れの返済を進めたことで17年3月末の有利子負債は6574億円(前年比730億円減)まで減少、金利負担が大幅に減った。また、前述のSDPの出資比率の引き下げで、17年1月以降は持分法投資損失のリスクが減ったほか、過去の液晶工場の度重なる減損で、これ以上の工場資産の評価減や減損による特別損失のリスクも減っている。

売り上げ拡大へ
さらに濃くなる
鴻海グループ色

 鴻海効果でコスト削減に劇的な成果を挙げたシャープは今期以降、売り上げ拡大にかじを切った。

 3年後の売上高を1.2兆円上乗せして3兆2500億円にする強気の中期経営計画で、特に、白物家電・スマホ・太陽電池の「スマートホーム部門」と、カメラモジュール・電子部品など「デバイス部門」の2部門は、それぞれ倍増を目指す(図(4))。

 ハードルの高い拡大計画だが、白物家電と電子部品は、鴻海グループの販路や内部取引を活用することになりそうで、今後3年間でシャープは鴻海の一部門としての役割を一段と強めそうだ。

 現時点で方向が明確なのはテレビの拡販で、欧州市場への再参入とともに、中国市場でも鴻海グループの販売力で台数増加を狙っている。北米のテレビ事業は、中国ハイセンスからの買い戻し交渉が難航しているため、別ブランドを立ち上げて攻略する方針だ。

 だが、台数拡大を狙えば価格競争に巻き込まれるという苦い経験があったはず。過去に採算が取れずに撤退・縮小した海外市場への再参入にどこまでの勝算があるのかは未知数だが、鴻海グループが描くシャープ復活の拡大戦略は危うさをはらみながらも、そのスピードを緩めることはなさそうだ。