「税金対策で日本には1年の半分しか滞在しない予定」(シャープ幹部)のトップが、「改革者」の振る舞いで上場企業を経営している Photo:つのだよしお/アフロ

再生に向け構造改革を進めていたはずのシャープが揺らいでいる。過去に液晶事業で巨額の損失を抱えた教訓を無視し、再び無謀ともいえる拡大路線に走り始めた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

 わずか2%──。これは、シャープの中小型液晶で2016年の総出荷量に占める、中国のスマートフォンメーカー・小米科技(シャオミ)向けの構成比(英調査会社のIHSテクノロジー調べ)だ。

 液晶事業が一時的に息を吹き返した3年前、シャオミのスマホ向けは米アップルに次いで2番目に出荷量が多く、構成比は23%にも上っていた。

 アップルのiPhone需要に依存する構図から抜け出すため、躍進する中国のスマホメーカーとの取引拡大は、シャープの液晶事業の安定化にとって喫緊の課題だったはずだが、その後の経営の迷走によって、見放されるように取引が激減してしまったわけだ。

 さらに、肝心のアップルとの取引も漸減しており、競合のジャパンディスプレイとはiPhone向けの出荷シェアで、20ポイント以上もの差をつけられてしまった。

 また、シャープはスマホ以外にも液晶の収益源を多様化しようと、自動車向けの液晶パネルの拡販を進めていた。しかし、得意客の米フォード・モーターと関係の深かった幹部が会社を去ってしまい、拡販への道程が足元で一気にかすんでしまっている。

 昨夏に台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入って以降、再生の要となるべき中小型液晶の収益は安定せず、むしろ病巣が広がってしまっているのだ。