国民が「経済にしか関心がない」ことも政治の混乱の一因だ

 安倍晋三政権の支持率急落が止まらない。都議選では、自民党が過去最低の23議席という壊滅的な惨敗を喫した後、7月24日、25日に行われた衆参予算委員会の閉会中審査において、安倍首相は慎重に言葉を選び、始終低姿勢を貫くことで、加計学園獣医学部新設の決定に自らが関与したという疑惑を晴らそうとした。しかし、「首相がいつ加計学園の獣医学部計画を知ったのか?」との質問に対する首相の答弁が迷走し、首相に対する疑惑はさらに深まる結果となってしまった。

 また、7月28日には、南スーダンPKOの日報隠蔽問題に関して、特別防衛監察の結果が公表された。防衛省・自衛隊が情報公開法に違反し、組織ぐるみで隠蔽(いんぺい)したことが明らかになる一方で、稲田朋美防衛相が日報の隠蔽(いんぺい)に関与したとの疑惑については、曖昧な表現で実態解明されなかった。しかし、稲田防衛相は混乱を招いた責任を取り辞任した。

 その他、蓮舫民進党代表の辞任、今井絵理子参院議員の不倫疑惑など、政界は「カオス」といっても過言ではない状況にある。国民の「政治不信」はますます深まっていると批判されている。

 しかし、この連載ではむしろ、「政治家が国民を信頼していない」ことが深刻な問題だと主張してきた(前連載2010.12.28付)。今回の一連の問題に関しても、「政治家の国民不信」が背景にあると考える。

経済政策で国民の支持を得て
国会で「やりたい政策」を強行採決

 安倍首相は、第二次政権発足時から、憲法改正について「私のライフワークだ。何のために政治家になったのか。何としてもやり遂げたい」と述べ、強い意欲を全く隠してこなかった。そして、その前段階として、「国家安全保障会議(日本版NSC)」の設置、「特定秘密保護法」(本連載2013.12.6付)、「安全保障法制」(2015.9.19付)、「テロ等準備罪法」(2017.6.20付)など、次々と保守色の強い「やりたい政策」を成立させてきた。