作家の今村翔吾氏作家の今村翔吾氏 Photo:SANKEI

2022年、『塞王の楯』で直木賞を受賞した今村翔吾氏。売れっ子作家として活躍している彼だが、実は多忙な執筆生活の傍で書店を経営している。税理士に反対されてまでも、経営状況の芳しくない書店の経営を引き継いだワケとは。※本稿は、作家の今村翔吾『書店を守れ!』(祥伝社新書)の一部を抜粋・編集したものです。

作家と書店は
まるで別物の商売

 私が「書店経営者」になった経緯を述べましょう。

 きっかけは、地元の友人からの相談でした。中高の同級生で、仕事でM&A(企業の合併・買収)の案件を取り扱っている友人から、書店の事業承継に興味はないかと聞かれたのです。「そんなに大きな話じゃないから、うちじゃちょっと扱えへんけど、駅からまあまあ近い書店で」といった具合に、大まかなプロフィールを教えてもらいました。

 正直に言うと、はじめは乗り気ではありませんでした。向こうは「おまえは作家やし、同じ業界やろ」と軽いノリで言うのですが、現実には、作家と書店はまるで別物の商売ですから。ただ、やっぱり気になって、一応見に行きました。今にして思えば、そこが分水嶺でした。行くか、行かないかということで、とりあえず行ってみるという選択をしたことに、ものすごく大きな意味があった。

 大阪の箕面に行き、オーナーさんにごあいさつしました。店内を一瞥して、「あ、これはまずいな」という気配は感じましたね。まず、在庫が少ない。書店は、売れ筋の本は棚に入れるのではなく(いわゆる「棚差し」)、陳列台(平台)に「平積み」にします。あるいは、棚で表紙を見せて並べる「面陳」、「多面陳」をします。ベストセラーが店頭に何冊も積まれている光景はよく見かけるでしょう。