「中国経済は“崩壊”へ向かっているのか?」――。不動産大手・恒大集団の経営危機以降、中国経済を巡っては悲観論が絶えない。しかし、中国の不動産バブル崩壊は、日本のバブル崩壊やリーマンショックと同じように考えていいのだろうか。中国経済研究の第一人者・柯隆氏は、「多くの人が見落としている決定的な違いがある」と語る。その違いとは、バブル崩壊の“スピード”だ。情報統制が可能な独裁国家ならではの危機対応とは何か。恒大集団の実例をもとに、中国経済のリアルに迫る。(丸山紀一朗、ダイヤモンド・ザイ編集部)
民主主義国家と独裁国家のバブル崩壊
異なるのは「スピード」
――この連載マンガ「恋する株式相場」では、過去に何度か中国経済をテーマにしています。今回はよろしくお願いします。
柯隆(か・りゅう)さん●公益財団法人東京財団常勤研究員。1963年、中華人民共和国・江蘇省南京市生まれ。1988年来日、愛知大学法経学部入学。1992年、同大卒業。1994年、名古屋大学大学院修士課程修了(経済学修士号取得)。長銀総合研究所国際調査部研究員(1998年まで)。1998~2006年、富士通総研経済研究所主任研究員、2006年より同主席研究員を経て、現職。
柯隆(以下、柯) まず私のスタンスが、楽観論とか悲観論とか一切ない前提で、自分が分析して感じているところをストレートに伝えます。中国経済のリアルをお伝えします。
――3年ほど前、恒大集団という不動産デベロッパーが破綻かという話の時に、「中国経済自体の先行きもまずい」と耳にしました。その後、中国は不動産バブルが弾けたと言われていますが、日本のバブル崩壊とは違うのですか?
柯 多くの方が理解していないのですが、日本のバブル崩壊、あるいは米国のリーマンショックと、中国の不動産バブル崩壊には、決定的な違いがあります。
それは、バブル崩壊のスピードです。
日本や米国、欧州のような民主主義あるいは法治国家のバブル崩壊は、ダメだと分かった瞬間、一気にクラッシュして、誰もそれを止められない。先延ばしにすることもできません。なぜかというと、民主主義の国では情報をコントロールできないからです。
投資家が最もパニックに陥るのは、リアルな危機に関する情報を手に入れた瞬間で、「パニック売り」などと言われます。その点、中国は独裁国家なので、政府がありとあらゆる情報をコントロールできる。恒大集団のケースもそうですが、情報は中国国内で小出しにされているので、実際に崩壊するのには時間がかかるのです。
恒大集団の実例を挙げると、2021年にドル建て債券のデフォルト、すなわち債務不履行が起きたのですが、実際に香港株式市場での上場廃止になったのが2025年8月25日。随分時間が経っています。
――4年も「延命」させたのですね。
柯 先日、恒大集団の創業者が裁判にかけられて、本人が贈賄や詐欺などすべての罪について認めました。「破綻することが予見できたのに金を集めた」だけではなく、他にも山ほど項目があるのですが。
なぜ上場廃止まで4年もかかったか、なぜ速やかに裁判が開かれなかったか。その理由の一つは、共産党幹部が関わっていたからです。








