ビットコインをはじめとする仮想通貨に関わる騒動や事件がいくつか発生し、いままで煽り気味だった方々や紙誌も逆に厳しい論調に変化してきている。筆者も本連載でビットコイン・仮想通貨・フィンテックに関する論稿を書き(2015/6/3付、2016/1/6付、2016/3/16付、2016/5/25付、2017/5/24付)、NHKの番組でも詳しく論説してきたが、基本的なスタンスは変わっていない。ビットコイン・仮想通貨・フィンテックについての基本的な説明はここでは割愛するが、今後の方向について考えてみたい。
従来の通貨は「中央集権」
仮想通貨の中核技術として「ブロックチェーン」という概念がある。発行者も管理者もおらず、取引を承認(マイニンング)して、ひとまとめにブロックにして、それをチェーンのように繋いでいく。最近の騒動では、その構造自体が課題になった。
金融は机上ではなく現場が大事であり、やってみないと分からないことがたくさんある。いわゆるフィンテックに携わっている方々とは用語法が多少違う。金融の現場では商取引の最終段階を「決済」という。現代は物々交換ではなく貨幣経済なので、通貨の受け渡しをもって決済とする。フィンテックの方々が使う「決済」は商品の売買であり、いわゆる振込は「送金」という。
筆者が27年間のメガバンク勤務の中で主な仕事の一つとしてきたのが、その「決済」のためのインフラである。全国銀行協会の委員会を中心に「全銀システム」や「外為円決済システム」などの決済システムの改革と構築、国際決済ネットワーク「SWIFT」の日本としての対応、そして、外為決済専門銀行「CLS銀行」の設立には欧米の現場で企画に携わってきた。現在も「電子記録債権機関」や当局の方々と「アジアの決済インフラ」について検討・支援している。その経験から言うと、決済インフラの最も重要な概念に中央への「集約」がある。この概念が、仮想通貨にはない。
決済インフラ(決済システム)は、国民の生活にとって非常に重要だ。その性質から言うって管理主体が大切で、問題が起きれば共同体のように正面から対応しなければならない。また最終決済は、法的通用性のある貨幣である「通貨」によってなされる。通貨はその国に一つしかない(そういう観点で、仮想通貨はそもそも仮想貨幣というべきものであり、誤解のもとである)。システム(ネットワーク)によって集約された決済システムは、日本銀行の当座預金を通じて最終決済を行っており、法的にも完了性を持っている。