「思いもかけない結果」が得られる
スプリントは約7人のチームの通常業務を5日間ストップさせて、集中的に取り組むプロセスだ。
ブルーボトルで選ばれたメンバーは、ジェームスのほか、COO(最高業務責任者)、CFO(最高財務責任者)、広報担当マネージャー、カスタマーサービス責任者、イギリスで最大のオーガニック食品のチェーンストアを創業した小売のエキスパートである会長の6人だった。
このスプリントでは、3つのオンラインストアのプロトタイプをつくり、顧客テストを行った。
1つは、ブルーボトルのリアル店舗の雰囲気を再現した、温かみのあるサイト。2つめは「文字だらけ」のサイト。バリスタが顧客との間でよく行うやりとりが再現されている。そして3つめは、いくつかの質問に答えてもらうことで顧客の好みに合った豆を提案するというものだ。
スプリントの最終日の顧客テストでは、ブルーボトルが想像もしなかった結果が生まれた。
当初、チームで一押しだったアイデアは、「リアル店舗の雰囲気を再現」する案で、サイトはブルーボトルのクールな雰囲気の店内そっくりで、木の棚まであった。チームは見栄えの良いものができたと自負していたが、実際のユーザーテストでは「陳腐」「うさんくさい」といった予想外の意見があがった。
一方で意外だったのは、「文字だらけ」のデザインへの反応だ。ブルーボトルのチームは、正直、これにはあまり魅力を感じていなかった。
だが、顧客は説明を隅々まで読み、詳細な情報を通してブルーボトルのメッセージと専門性への信頼感を抱いたのだった。ジェームスとブルーボトルのチームは、スプリントによって自信を深め、オンラインストアのあるべき姿に近づいた。
数か月後、ブルーボトルの新しいウェブサイトがオープンすると、非常に高いオンラインストアの売上高を記録した。