ブルーボトルコーヒーとは
ブルーボトルコーヒーは、2002年にジェームス・フリーマンによって創設され、現在はサンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルス、ワシントンD.C.、東京の5都市圏で38店舗を展開している(2017年8月23日現在)。今後2017年米国では、マイアミ、ボストンへの進出を予定。販売する豆や店頭で提供するコーヒーは、厳しく選別され、豆によって異なるおいしさのピークに合わせエイジングし、提供している。カフェオープンにあたっては、まずロースタリーを設け、焙煎したてのコーヒーが配送可能な範囲にのみカフェをつくることで新鮮なコーヒーを提供することを実現している。

「批判的な人」をあえてチームに入れる

 取材に答えてもらったブルーボトルの担当者によると、「スプリントは、アメリカでは相当よく知られているように感じる」という。会社の規模の大小にかかわらず、スプリントを実践している会社は多く、年に1、2度のペースで行われることが多いそうだ。

 ブルーボトルでも、オンラインストアのローンチをして以来、年に1回ほどのペースでスプリントを実践している。

 スプリントをするには、7人の従業員がほぼ丸1週間、通常業務から離れなくてはならない。ブルーボトルは、「これはたしかに大きな障壁だが、スプリントは、そこまでしてもやるべき価値のあるプロセスだ」と考えている。

「何か月、何年もかかるような大掛かりなプロジェクトを始めようとするとき、あるアイデアが特定のゴールを達成できるのに効果的かどうかを検証する作業が、たった5日間で達成できることは素晴らしい」と評価しているのだ。

 今年(2017年)もブルーボトルでは、スプリントによって「Coffee Match」というサービスが誕生した。

ブルーボトルコーヒーが「最速仕事術」を導入した理由ブルーボトルコーヒーが「スプリント」を通して開発したオンラインサービス「Coffee Match」
好みの器具でのコーヒーの淹れ方から、好きなチョコレートやスパイス、ドレッシングの味など、10の質問に答えることで、好みに合ったコーヒー豆を選ぶことができる
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 ブルーボトルの豆を購入したことがない顧客に対して、いくつかの質問を投げかけ、回答を選択してもらうことで、好みに合ったコーヒーフレーバーを見つけてもらうオンラインサービスだ。

「Coffee Match」では、質問に最後まで答えてくれる顧客が全体の約94%であり、利用した顧客からは「非常にポジティブな反応が得られている」という。

 スプリントへの参加者については、「普段から批判的な人や、疑問や質問を投げかけるのが好きな人に関わってもらう良い機会」と捉えている。

「そうした人たちとスプリントを行うことで彼らの疑問や懸念を早い段階で表面化し、それについて議論できるので、実際の開発プロセスにおいて彼らの賛同を得やすくなる」というのだ。

 また、「早い段階で1つのゴールに向かって一致団結し、顧客がサービスの試作品(プロトタイプ)を利用する様子を見ることができるので、チームが一体感を持ち、より効率的にプロジェクトを実施できるようになる」というメリットもある。

 スプリントは、たとえサービスのプロトタイプによって期待したような結果を得られなかったとしても、少なくともチームや会社は、プロトタイプの何がうまくいき、何がうまくいかないのかを早い段階で知ることができる。つまり、スプリントからは「欠陥のある成功」か「効率的な失敗」というどちらかの成果が得られるのである。

 ブルーボトルコーヒージャパン取締役の井川沙紀氏は「ブルーボトルコーヒーのブランドを拡大・成長させて行くためにも、スプリントを日本支社でもぜひ実践してみたい」と、意気込みを見せている。