昨年の今頃の市場動向を覚えておられるだろうか。
世界的に長期金利が歴史的に最低金利を更新し、為替市場では円は独歩高だった。
当時、長期金利は、日本では10年物国債の金利が▲0.3%程度まで低下。ドイツでは▲0.1%と史上最低水準を更新した。米国でも、10年金利は1.5%を割れ、一時的に1.3%台まで下がった。
世界の経済は「3L」、すなわち「3つの低い」で「低成長、低インフレ、低金利」が議論されていたが、その「3L」が極まった局面で、しかも、その中で最も厳しかったのは日本だった。
だがその後、米国は利上げに転じるなど、欧米と金融緩和を続ける日本では金融政策の方向が逆になり、為替も円安へと流れが一転している。日銀の物価目標達成も、この流れがいつまで続くかにかかっている
1年前は円の独歩高、異次元緩和も
“為替引き下げ競争”で敗北
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図表1は、主要5通貨の実効為替レートの推移だが、これからも、当時は「円の独歩高」だったことがわかる。
2016年初から米国がドル安に舵を切り、6月には英国で国民投票によって「EU離脱」が決まってポンド安になり、その影響もあってユーロも連れ安に。円だけがまるでサッカーのオフサイドトラップにはまったかのように、円高で残った状況にあった。