武蔵野の高級住宅地として、独自のステイタスと文化圏を保ち続けているのが、中央線をまたいで隣接する国分寺・国立である。人気の沿線に並ぶ街の中で、その性格は際立っている。かたや歴史都市、かたや学園都市。市域にありながら都区部と肩を並べ、あるいは凌ぐイメージの街並みは、都市住民の理想郷としての典型でもある。

都市生活者の
理想を満たす街

 武蔵野エリアのイメージリーダー、東京の中心、とあえて言う人がいる。確かに奥多摩地方を含めて考えれば、国分寺・国立はほぼその中央部に位置しており、地理的には嘘とは決めつけられないだろう。そして何よりこの言葉に抵抗し難いのは、住むことが都市生活者の理想的ビジョンの1つを示しているという土地柄のせいだろう。都心で仕事を持ち、帰る家は環境の良い郊外、しかも通勤に苦痛なほどの時間は強いられない。

 国分寺・国立は、そうした生活を保証し続けたのである。一方はキャッチフレーズに言う「水と緑と文化の町」=国分寺であり、かたや一橋大学を中心とする純然たる学園都市=国立として。

中央線
[中央線] 住宅地として人気の高い中央線沿線。中でも国分寺・国立は、「暮らす」街として人気のエリア。

 住宅地として人気の高い中央線沿線の中でも、この2つの街はとくに印象が強い街、といえるだろう。東京都が行なう地域性の調査などでは、この2市に武蔵野市、小金井市、多摩市を加えて「武蔵野グループ」と命名しているのだが、一般にイメージされる武蔵野住まいといえば…言わずもがなであろう。吉祥寺を抱えて荻窪、中野と続く1つの文化圏をつくった感のある武蔵野市、いまひとつアピールのない他の2つの市と比べて、国分寺・国立の魅力は鮮明である。

 そしてまた、この2つの街は、武蔵野住まいに心をそそる選択肢を提示する。1つは「国分寺崖線」というガケ(地元では“ハケ”とぶ)がそのままに生かされ、疎水と古刹が目につく昔ながらの家並み。いま一つは、大通りを中心として整然と区分けされた街並みの人工美。

 外から訪れる身にしてみれば、鎌倉と田園調布が隣合っている趣があり、また住む人々も、そのイメージに重なり合ってみえるようである。