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イノベーションに求められる人材像

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第71回】 2017年8月25日
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IT部門人材の適性

 ビジネスの領域に属するビジネス・マネジメント力や組織牽引力については、これまでのプロジェクト管理や、事業部門間の調整を行ってきたIT部門の経験やスキルを活かすことができるため、IT部門の人材がプロデューサーの役割を担うことには大きな困難は伴わないであろう。また、テクノロジの領域に含まれる技術適用力や試作・改善力についても、これまでIT技術の目利き役を果たしてきた経験が役立つだろう。一方、テクノロジの領域のスキルについては、ユーザー企業の人材があらゆる最新技術を研究し、熟知することは困難であったり、プロトタイプの開発を迅速に行うスキルが不足したりするため、ITベンダーの力を借りることも多いと考えられる。その際に、IT部門の人材が他の人材(プロデューサーやデザイナー)とITベンダーの橋渡し役を担うことができるであろう。

 現時点においてIT部門に最も不足しているのは、デザインの領域のスキルではないだろうか。アイデアを生み出したり、モデル化したりするには情報システム関連のスキルだけではなく、デザイン思考や未来視点で仮説を設定するスキルを必要とする。着想や企画構築のプロセスも、これまでのシステム構築の超上流工程で行われてきたビジネス分析や要求定義とは異なるアプローチが必要となる。

 また、イノベーション案件の多くは、最初から明確なシステム要件が決まっているわけではないため、仮説を検証しながら軌道修正を繰り替えていくことが求められ、アジャイル的にプロジェクトを推進するスキルが必要となる。また、プロデューサーにもデザイナーにも必要な外部環境把握力は、ビジネスを取り巻く様々な環境に目を向ける幅広い視野と、最新の動向や将来の行く先を正しく見極める洞察力が必要となる。

 こうしたスキルは、IT部門人材にとって未開拓な領域であるため、学ばなければならいことは多いだろう。しかし、それらはしっかりと学べばよいし、少なくとも一定レベルのIT技術者であれば、それらを身につける基本的な素養(論理思考やモデリングなどの構造表現のスキル)は持っていると考えられる。重要なのは、そうした未開拓なスキル領域を身につけようとする個人の姿勢であり、組織としてはそうしたスキルを身につける機会を提供することができるかどうかという点である。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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