BCGDV エクスペリエンスデザインディレクター 坪田朋

「私たちが創出する新規事業は、世の中にまだ存在しないものを生み出すためのものです。それゆえ、本当にそれがユーザーに求められているものなのか、創り手がイメージしているコンセプトと合っているのかを言葉だけで相手に伝えるには限界があります。そのため、Web画面やモックアップ(実物大の模型)、動画、3Dプリンターなどを使って、目に見える形に落とし込む必要があるんです」

 プロジェクトでは、各ステージでユーザーへのコンセプトテストを繰り返し、時には100を超える試作品やバージョンをつくることもあります。事業アイデアをユーザーや、コーポレートパートナー(協業先企業)の経営層にイメージしてもらう時にも、最終製品化に向けて磨き上げて行く時にも、さらには商品が市場に出てからブラッシュアップをかけていく時にも、すべては実際にその「モノ」がないと話になりません。そのため、「モノ」の形に落とし込むデザイナーの役割は一貫して非常に大きいと言えます。

 実際に、私たちのプロジェクトでは、事業アイデア創出の段階の初期から、開発、商用化のステージに至るまで、デザイナーには常にプロジェクトメンバーの中核を担ってもらいます。

 この「可視化」する能力がなぜここまで重要かというと、大きな理由の一つとしては、新規ビジネスを創出する環境が、従来のデザイナーが働く現場やビジネス環境と大きく違うからということがあげられます。

 従来のビジネス環境では、デザインはデザイン部門、エンジニアはエンジニアリング部門、といった形で役割、職種に応じて組織を設計して、さらに各部門が連携して横断組織をつくるといったようなことがよくありました。しかし、これで果たして本当に職種を超えてコラボラティブな働き方を実現し、イノベーションを生み出すことが可能なのかというと、正直疑わしいと私は考えています。

 新規事業創出においては、プロジェクト単位で様々な職種の人間がワンチームで同じミッション、スコープ(ミッションを達成するための作業)を共有して、それぞれがその得意な分野で力を発揮しつつ、すべてのメンバーが、自分自身がプロジェクトオーナーであるという意識を持って取り組むことが必須だと、これまでの経験から感じています。

 BCGDVでも、企画の初期段階から開発、上市、その後のスケール(マーケットに合わせてサービスの規模を縮小・拡大すること)まで、違う特技を持ったさまざまな職種の人間がプロジェクトに携わります。コーポレートパートナーや外部協力会社のメンバーにもBCGDVのオフィスに常駐してもらい、みんなが混ざる形で、コラボラティブに働くよう、プロジェクトを設計しています。