当社に「責任論」はなく
「機敏な対処」しかない

 開発陣の1人が話す。

「アプリをリリースしたとき『スタンプショップ』は計画にすらありませんでした。私は弊社で3ヵ月以上先のことが書いてある計画表を見たことがありません(笑)。スタンプの絵柄だって、当初は爽やかなイラストを思い描いていましたが、デザイナーがインパクトの強い絵柄を描き、私たちも『面白い!』と感じたため『一旦これで』と決まったものです」

 アプリは頻繁にアップデートできるから、例えば自動車や家電製品の開発のように、ロードマップを決めて動く必要はない。それより開発陣が「やってみなきゃわからない」感覚を共有しつつ、すぐリリースし、ユーザーの変化に機敏に対応することのほうが重要なのだ。

 これは「誰がいつまでに何をする」と、計画をきっちり立てて進めることが多い日本企業の中では、画期的な考え方だろう。

「新たな試みは99%、想定通りの形では成功しない」と話すLINEモバイルの嘉戸社長。中長期の計画を立てることを好む多くの日本企業と違い、「とにかくやってみる」のがLINEの特徴だ

 そしてこの考え方が「LINEモバイル」にも活かされている。同社・嘉戸彩乃社長によれば、16年9月の同サービスローンチも、市場が“#温まった”タイミングだったからだという。

「市場は1人(=1社)で頑張っても動きません。とくにMVNOは、お客様が『どんなメリットがあるのか』『なぜこういう業者があるのか』と理解するまでのハードルが少し高い。だから競合がいて、市場全体が盛り上がっているタイミングで参入しました」

 同社のプランの特徴は、LINEがカウントフリー(データ消費がカウントされない)になるプラン、主要SNSもカウントフリーになるプラン、さらに『LINE MUSIC』もカウントフリーになるプランの3種類。これらはユーザーの行動パターンを分析し尽くして誕生したものだ。

 学生ユーザーは「LINEとSNSができればいい」「通話はほとんどしない」というユーザーが多い。また、親も「何でも見放題のスマホより、友人同士のコミュニケーションや音楽に特化したスマホのほうがいい」と考えるのは当然のこと。しかも嘉戸社長によれば、同社にはこれらのデータを日々見える化する部署があるらしい。

「私たちには、どんなプランをご利用の、何歳のお客様が、どれくらいデータ通信したかなどを見える化する『ビジネスインテリジェンスチーム』が存在します。例えば『この端末だけが、なぜか選ばれない』といった異変が起きたら、すぐ原因を調べ対処します。当社に『なぜこうなったんだ!』という責任論はなく『こうなったならアテが外れたからこうしてみよう』という機敏な対処しかありません。やってみなければわからないから、そもそも、すぐ修正が利く体勢をつくってスタートするのです。新たな試みは9割、いえ99%、想定通りの形で成功はしませんから(笑)」