IoTで革新的プラットフォームを
構築するベンチャー企業・ソラコム

常識を覆す「1日10円」通信サービス、小さな巨人ソラコムの革新力IoT分野において革新的なプラットフォームを築きつつある、ソラコムの「SORACOM Air」

 MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)という名前をよく耳にするようになった。NTTドコモなどのキャリアから回線を借りて、付加価値をつけて通信を提供する会社のことを指す。形はNTTドコモから回線を借りているMVNOであるが、IoT分野において革新的なプラットフォームを築きつつあるのが、株式会社ソラコムである。

 プラットフォームとは、多くのモノやヒトをつなぐ基盤のことである。ソラコムは「何かをできるようにするためのプラットフォームの提供」を目的として設立された。新しい事業を立ち上げようとしても、それを実現する過程において、ITへの初期投資額が高く、それが起業を難しくしている事例は少なくない。ソラコムは、この壁を取り除こうとしたのである。ITへの投資余力のないユーザーにとって、IT費用を固定費から変動費に変え、IT化の壁を低くした。

 ソラコムは、アマゾンデータサービスジャパン(現アマゾンウェブサービスジャパン)で、AWS(Amazon Web Services:アマゾン ウェブ サービス)の立ち上げを行った玉川憲氏らが、2015年に創業した、いまだ従業員30名のベンチャー企業である。

 そもそもは、「AWSのようなオープンでフェアなプラットフォームビジネスを、IoTでもできないか」と考えたのが始まりであった。米国ではAWSを使って、Dropbox(ドロップボックス)、Instagram(インスタグラム)、Uber(ウーバー)、Airbnb(エアビーアンドビー)などのビジネスが生まれてきた。本連載で、創業2年目、社員数30名の小企業を採り上げる例は初めてだが、画期的なビジネスモデルでIoTの通信とセキュリティの課題を解決しようとしている同社のポテンシャルに注目したい。

 あらゆるモノがインターネットにつながるIoTは、いまだ発展途上にある。日本の人口は1億2693万人で減少傾向にあるが、モノとモノをつなぐIoTであれば、人口の100倍、1000倍もの需要が見込め、未開拓の有望市場と言えよう。

 しかしIoTでは、接続方法とセキュリティに課題が残されている。接続方法に関しては、有線では物理的制約が多く、無線に頼らざるを得ない。しかし、無線LANは事前設定が必要であり、手軽に使うには、スマホと同じモバイル通信が最適である。このモバイル通信を利用するには、期間や数量などの固定契約が多く、また「ヒト向け」に最適化された料金プランがほとんどで、少量のデータ通信が多い「モノ向け」には合わなかった。