建設機械業界にも、一部に薄日が差してきた。

 6月末に建設機械工業会から公表された、5月分の国内建機出荷額は、692億円で前年同期比65%減少した。これで出荷額は8ヵ月連続マイナスとなり、統計上は建機業界は底なし状態だ。

 しかし、「数字からはわからないが、足元の部品の出荷状況が回復傾向にあるなど、明るい兆しが見えてきている」(建設機械工業会)というのだ。

 たとえばタイヤ最大手のブリヂストンは6月17日、北九州市に新設した建機用タイヤの工場を、需要回復に対応して予定より3ヵ月も前倒しで稼働させた。同社にとって33年ぶりとなる国内の新設工場であり、不況の真っただ中にありながらも建機需要に展望を描いていることがうかがえる。

 需要回復の牽引役はやはり中国だ。もともと年初頃は、中国では2月の旧正月(春節)明けに需要が本格化すると期待されていた。ところが、2~4月の需要は前年割れとなり、国内建機業界の景況感は一気にドン底に落ち込んだ。

 だが、5月から旺盛な開発意欲が回復したことで中国の需要が急回復。しかも、4兆元(約52兆円)もの景気対策による公共投資はこれから始まるということで、今夏以降は一段と伸びるのではと関係者の期待は高まるばかりだ。

 中国需要の波に確実に乗ったのが中国で圧倒的なブランドを築いた建機国内首位のコマツだ。コマツは中国での販売台数が6月分は6月26日の時点で前年同月を上回るなど、中国市場の回復を着実に取り込んでいる。建機国内3位のコベルコ建機も四川省に生産工場がある地の利を生かし、同省での震災復興需要の波に乗っている。

 中国の資源需要は資源価格の回復も演じ、インドネシアやオーストラリアなど資源国での投資も再開されてきた。特に鉱山機械で米キャタピラーと二分するコマツは、「鉱山向けの引き合いも強まっている」(コマツ役員)という。

 一方で国内に軸足を置いた中小の建機関連企業や、先進国がメイン市場であるミニ建機が中心の企業の苦境は、当面続きそうである。

 とりわけ国内市場は、「総選挙後の景気刺激政策が不透明だし、仮に公共工事が増えたとしても、民間工事の減少がそれ以上なので期待していない」(大手建機幹部)。

 建機メーカーは中国での営業力や取り扱い機種の違いで、今期の業績格差が広がりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木 豪)

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