>>(上)より続く

「何の交渉もせず、向こうの要求をそのまま受け入れるだけじゃ困ります!旦那に頼まれて私を説得しようとするなんて…どっちの味方なんですか?5万じゃ子ども2人は育てられませんよ。旦那の言いなりじゃ、何のための弁護士なんですか!」

 望さんはそんなふうに強い口調で弁護士に詰め寄ったのですが、「もっと良い方法があるんじゃないですか。何か策を考えてくださいよ。旦那に私の気持ちをちゃんと伝えてくれたんですか?」と言い捨てて弁護士事務所を後にしたのです。そうすると翌日、弁護士から信じられないような内容のメールが届いたそうです。

「こんなことが続くのなら当職は辞任します。次回、旦那さんに会うのは来週なので、それまでに他の弁護士を探してください。当職で他の弁護士を探したり、その弁護士への引き継ぎは行いません。上原さんに合った弁護士をお探しください」と。

弁護士との交渉が止まり
夫の家出から3ヵ月

 弁護士が「辞任」をちらつかせて圧力をかけてきたことに望さんは愕然とし、急いで弁護士会に駆け込んだそうです。そして「別の弁護士をお願いします!」と頼んだのですが、「まだ正式に辞任したわけじゃないんですよね?今の弁護士との契約をきちんと終了させてから再度、来てください」と門前払いに近いような形で追い返されてしまい、途方に暮れていたのです。

 こうして弁護士と夫との交渉は完全に止まってしまいました。望さんが弁護士事務所の固定電話にかけても、電話に出るのは事務員だけ。弁護士本人には取り次いでくれませんでした。夫が家を出てから3ヵ月。弁護士に依頼してから2ヵ月。夫から回収した金額は「0円」という有様。さらに望さんは次第に弁護士の存在が怖くなってしまい、「なんで無視するんですか?」「ちゃんと辞任してください」「着手金を返してほしいです」と尋ねる勇気もなく、だからといって弁護士抜きで夫と交渉するのは危険すぎます。

 法テラスに電話をすると「弁護士の皆さんは忙しいなか、うち(法テラス)の案件をやってくださっているんです。2ヵ月くらい待てませんか!」と一蹴されてしまい…そんなふうに状況が好転するきっかけすら見いだせないまま、時間ばかりが過ぎていったのです。望さんが私のところへ相談しに来たのはそんな絶望的なタイミングでした。