GALAPAGOS撤退?

 去る9月15日、シャープは情報端末「GALAPAGOS」(以下ガラパゴス)の初代モデルの販売終了を発表した。

 2010年12月に鳴り物入りで投入された同端末だが、すでに生産も終了し、在庫の販売申し込みも今月中に終了するという。

 この発表に対し、巷ではシャープのガラパゴス事業全体が終了するのではないか、という見方が広まった。当初の報道がそう読み取れるように書かれていたこと、またそもそも同社のガラパゴスというブランドの運用方法が分かりにくかったことから、こうした誤解が生じたのだろう。

 そう解釈されてしまう伏線も確かにあった。今年7月、ガラパゴスに搭載するOSを、Androidに変更したのだ。これにより、従来の「電子書籍専用端末」から、音楽やゲームを楽しめる、より一般的な情報端末へと変身を遂げた。ただ、電子書籍を強力にアピールした当初の打ち出し方からすれば、戦略が揺らいでいるようにも見えたのは事実である。

 こうした反響を受けて翌16日には、シャープの浜野稔重副社長が、ガラパゴス事業は辞めず、むしろ強化していくことを発表。電子書籍等のコンテンツサービスはもちろん、端末についても来年中に新機種を投入すべく開発中であることを明かした。

 当初からシャープ自らが宣言しているように、同社のガラパゴス事業はサービス事業であり、「ものを作って売る」というメーカーの基本的なビジネスモデルとは抜本的に異なる。そうした不慣れな事業に敢えて正面から取り組む覚悟を、関係者は以前から強調していた。

 それだけに、「成果が出なかったからといって、わずか1年弱で撤退するのは、さすがにないのでは?」と思っていたのだが、やはり事実関係は異なっていたようだ。

続けなければ信頼は得られない

 一方で、あたかもシャープがガラパゴス事業からの「全面撤退」を決断したかのように断じ、かつそれを評価するという声も、少なくなかった。曰く、日本のメーカーにしては迅速な意思決定であり、浅い傷で済んだのではないか、というものである。

 確かにそうした考えにも一理はある。そしてそうした迅速な意思決定と無駄の削減が、過去10年近く日本企業を「筋肉質」にしてきたとも言える。

 しかし、もしシャープが本気でこの事業に取り組もうとしているなら、参入後1年足らずで撤退するというのは、やはり間違っている。同社とてこうした領域では新参者である以上、「ちょっと手を出しては失敗してすぐ撤退」というやり方では、ステイクホルダーの信頼を得られるはずもないからだ。