永守ニデック 最終審判#10Photo:Bloomberg/gettyimages

ニデックの不適切会計問題を巡る第三者委員会の調査が、いよいよ大詰めを迎えている。最大の焦点は、創業者の永守重信氏が一連の会計処理の判断に、実質的に関与していたのかどうかだ。ダイヤモンド社は、ニデックに提起された訴訟の裁判資料から、永守氏の経営への関わり方やニデックの企業風土を浮き彫りにする「極秘メール」を入手した。特集『永守ニデック 最終審判』の#10では、このメールを全文公開。永守氏の意思決定プロセス、ニデックの権力構造、そして不適切会計疑惑との共通点を読み解く。(ダイヤモンド社メディア局論説委員 浅島亮子)

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幹部へのいら立ちが噴き出した「長文メール」
永守氏は意思決定にどう関与したのか

「何度も同じことを指示するが、来期は絶対に計画過達でいかないと日本電産(現ニデック)のマーケット信用は暴落するリスクがある――」

 2022年3月7日、創業者の永守重信氏(当時は会長)が、関潤社長(当時。現在は台湾・鴻海精密工業の最高戦略責任者)を含む幹部11人に、強い語調の長文メールを送った。冒頭から漂うのは、幹部に対するいら立ちと焦燥感である。

 メールの件名は、「2022年度の事業計画(創業者案追加再送)」。22年3月期の営業利益が、対外的に公表してきた目標1900億円を下回る見通しとなり、業を煮やした永守氏が、翌23年3月期の業績目標を引き上げる狙いで送信したものだ。文面には、厳しい表現が随所に並び、永守氏の危機感が色濃くにじむ。

 この“極秘メール”は、ニデックがダイヤモンド社との訴訟で提出した裁判資料の一つである。訴訟の対象となったのは、役員の流出を報じた2本の記事だ。いずれも、「一部の幹部が、永守氏が設定した目標を達成できず、事実上の解任・降格・減俸を経て社外に流出した」と指摘していた。

 これに対しニデック側は、「永守氏が独断で業績目標や人事を決めることはない」ことを示す反証として、このメールを提出したのである。

 では、22年3月期の目標未達という、経営判断が守勢に傾きがちな局面で、永守氏は、どのような理屈で次年度の業績目標の引き上げを幹部に迫ったのか。

 一方、不適切会計疑惑の調査が佳境を迎えている。減損処理の先送りなどが指摘される中、そうした判断に永守氏がどこまで関与していたのかが焦点だ。会計処理に疑義が生じた背景には、企業風土の問題があるとの見方も根強い。業績目標の設定プロセスをたどることで、永守氏が経営の中枢にどのように関与してきたのかが浮かび上がる。

 次ページでは、この極秘メールの全文を公開する(重要度の低い部分は一部省略)。

永守重信氏が幹部に送った極秘メール永守重信氏が幹部に送った極秘メール。宛先には、当時社長だった関潤氏、“永守氏の子分”を自認する小部博志氏が含まれている

 このメールには、永守氏の意思決定の実像、ニデックの経営哲学と権力構造、そして企業風土が凝縮されている。不適切会計疑惑との共通項を踏まえながら、ニデックが抱える経営問題の核心を読み解く。