幼稚園から大学まで中国の新学期は9月に始まるが、その1ヶ月前の8月から9月中旬にかけて学生向け商品が飛ぶように売れる一大商戦期に突入する。この時期の経済を中国語では「開学経済」と呼ぶ。今年も8月から中国の大都市のさまざまな場所で学生やその親を呼び込む、お馴染みの赤い横断幕や広告をよく見かけた。
中国人は「面子(メンツ)」を何より大事にするといわれるが、それは大人の世界に限らない。子供も「みんなが持っているから、持っていないと恥ずかしい」という意識は強い。そこで、多くの親は、わが子のメンツのためにも、月収以上のおカネを投じて欲しいモノを出来る限り買い揃えてやる傾向がある。やや下品な言い方になるが、この時期の親は業者にとっては「カモ」なのだ。
新学期商戦中は、パソコン雑誌やIT系のオンラインメディアも、ここぞとばかりに学生向けのパソコン特集記事を組むので、ネット通販に押されて最近元気がない電脳街も大いに賑わうことになる。もちろん、ITリテラシーの高い学生たちはわざわざお店に行かず「淘宝網(TAOBAO)」に代表されるオンラインショッピングサイトでパソコンや情報家電を安く購入するが、お金を支払う親がパソコンを持っていなかったり、オンラインショッピングを理解していなかったりすると、少々高くついても店舗に足を運ぶようだ。
売れ筋はノートPCで、4000~7000元のモデル。日本円にして5万円から8万5000円程度と、あまり安くはない。もちろん、その金額を支払う余裕のない学生もいて、そうした学生たちはPCパーツを一式揃えて店側にデスクトップPCを作ってもらう。こちらは合計2300元くらい。日本円では3万円前後だ。
また、この時期は携帯電話ショップも携帯電話キャリアも学生顧客の獲得に必死になる。現在中国では3G+スマートフォンの人気が急上昇しているが、3G方式の異なるキャリア3社「中国移動(China Mobile、TD-SCDMA方式)」「中国聯通(China Unicom、W-CDMA方式)」「中国電信(China Telecom、CDMA 2000方式)」それぞれがキャンパス内の大学生を丸ごと囲い込もうと、各大学に対して他社の3Gの基地局を設置しないよう契約で求める動きが広がっている。中国政府は「悪性の競争」だとして禁止を通達するも、事実上無視され競争は激化する一方だ。