硬直化しているかに見えた北方領土問題が、ここにきてにわかに動き始めている。昨年、旧ソ連時代を含めたロシア元首として初めて北方領土を訪問したメドベージェフ大統領に続き、今月上旬、ロシア高官が北方4島を訪れた。発足したばかりの野田内閣はこれに遺憾の意を表明し、北方領土を巡る両国間の緊張が一気に高まっている。この北方領土問題、そもそもの火種と解決への出口はどこにあるのだろうか。日本にとっての北方領土の重要性と、今後とるべき選択について、改めて考えてみたい。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)
ロシアはどういうつもりなのか?
一気に緊張感が高まる北方領土問題
「ロシアはいったいどういうつもりなのか」「政治的な駆け引きのために、日本を牽制しているとしか思えない」
長らく日本を悩ませつつも、硬直化しているかに見えた北方領土問題が、にわかに動き始めている。今月上旬、ロシア高官が北方4島を訪れたことについて、日本政府は遺憾の意を表明。それに対し、ロシア外務省は「北方領土はロシアの領土である」という主張を改めて行なった。
これは、交渉が相変わらず平行線にあることを日本人に再認識させる一幕であった。国策として軍備強化に努めるロシア側は、北方領土の一角・国後島に駐留する部隊の装備を刷新。軍事面においても、北方領土の実効支配を拡張している。
今回の事態を受け、国民の間には冒頭のような不満や不安が噴出。日本政府も対決姿勢を崩さず、今後の対応を協議している。
しかし、普天間基地の移設問題をはじめ、これまで民主党政権の外交力には疑問符が付けられてきた。ただでさえ、政権発足後間もない野田内閣においては、難しい課題となるだろう。政府は北方領土問題を解決し、ロシアと平和条約を締結することを第一と考えているが、それも現在の外交力の前では絵空事にしか見えない。
そうこうしているうちに、ロシアではプーチン首相が来春の大統領選に出馬する意向を表明した。昨年11月、旧ソ連時代を含めたロシア元首として初めて北方領土を「電撃訪問」し、物議を醸したメドベージェフ大統領と比べ、プーチン首相は北方領土問題の交渉に比較的前向きだと言われている。