昨年4月、世界初の治療用がんワクチン、シプリューセル‐T(製品名プロベンジ)が米食品医薬品局(FDA)に承認された。適応は「ホルモン療法抵抗性前立腺がん」で、前立腺がんの増殖にかかわる男性ホルモンを抑える治療が無効になった患者が対象。承認の決め手となった臨床試験では、プラセボ投与群に比較して生存期間を4.1ヵ月延ばした。副作用は悪寒、発熱、倦怠感など軽いものがほとんどだ。
前立腺がんは男性ホルモンの刺激で増殖するため、男性ホルモンの分泌やがん細胞の取り込みを阻む「ホルモン療法」がよく行われる。日本人には割と効きやすく重大な副作用も少ない。ところがなぜか数年すると薬が効かなくなり、がん細胞が「再燃」してしまう。昔はこの時点で余命1年を告げられた。しかし今はホルモン剤の変更や抗がん剤を追加するなど、あの手この手で延命が可能。ただ最後の手段として抗がん剤を使う際は強い副作用が避けられず、高齢患者はあえて緩和的治療を選択することも少なくない。