ヴォーゲル 私は、「アメリカが絶対的に正しい」とは思わなかったんですね。1970年代に日本に滞在したときに、「日本は今後もっと強くなる、アメリカは日本から学ばないと大変なことになる」と思いました。当時、ジャパンバッシングが始まっていましたが、日本を攻撃するよりも日本から学ぶことのほうが大切だと感じました。

佐藤 ハーバード大学の教員からの反響はいかがでしたか。

本連載の関連書籍「ハーバード日本史教室」(中公新書ラクレ)が好評発売中!ハーバード大の教授10人のインタビューを通して、世界から見た日本の価値を再発見できる一冊

ヴォーゲル 日本について研究している教員たちは「この本が述べていることは概ね正しい」と評価してくれました。日本での大ヒットが伝えられると、教員の中には「ヴォーゲル先生は急に日本で有名になったそうだが、どうやって有名になったのか」と不思議に思っていた人もいたそうです(笑)。

佐藤 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の内容に特に強く反応したのはどういう業界でしたか。

ヴォーゲル 自動車メーカー、半導体メーカーなど、製造業が多かったでしょうか。日本の製品がなぜこれほど品質が高いのかということに特に興味を持っていました。

 先ほど申し上げたとおり、日本から学ぶ必要があることをエリート層は理解していました。会社の経営陣は私の著書を読んで、日本の競争力の源泉を理解し、特に品質管理の方法を自社にも導入しようと考えていました。ところが、現場で働いている人たちは、「なぜ日本式を取り入れなければならないのか」とその理由を理解していませんでした。そこで経営者から「社員のために講演してください」と頼まれ、様々なメーカーで講演することとなったのです。

佐藤 アメリカ政府にはどのような影響がありましたか。

ヴォーゲル 対日政策にどれほど影響があったかはわからないですが、1982年に、テキサス州オースティンに官民一体の研究所が設立されたことには影響はあったのかなと思います。