新刊『心に届く話し方 65のルール』では、元NHKアナウンサー・松本和也が、話し方・聞き方に悩むふつうの方々に向けて、放送現場で培ってきた「伝わるノウハウ」を細かくかみ砕いて解説しています。
今回の連載で著者がお伝えするのは、「自分をよく見せることを第一に考える話し方」ではなく、「聞いている人にとっての心地よさを第一に考える」話し方です。本連載では、一部抜粋して紹介していきます。

結婚式でスピーチを頼まれたら、まず何をすればいいのか?

スピーチを頼まれたら、
座席表と進行表を入手する

 結婚披露宴など改まったお祝いの席でスピーチを頼まれることは、誰でも一度や二度はあるでしょう。そんなときスピーチの内容を考える前にしておくべきことがあります。それは、「出席者の顔ぶれがわかる座席表」「披露パーティーの進行表」の二つを入手することです。

 まずは座席表。これを見ておくだけで、エピソードの内容を決めるヒントになります

 座席表を確認したとき、例えば比較的少なめの人数の場合は、親族やごく親しい友人がほとんどであることが考えられます。ということは、新郎または新婦を子どもの頃からよく知っている方が多い→新郎新婦の「現在の意外な一面」にスポットをあてたり、建て前先行のよそよそしい話よりも本音のエピソードがピッタリきそうです。

 人数が多くなるにつれて、社会的に地位の高い人や、新郎新婦をよく知らない人も増えてくることが考えられます。その場合に披露するエピソードは、もっとオフィシャルなものや、新郎新婦の人柄のおおよそのイメージが伝わるものにしたほうが無難になります。

 進行表は、エピソードの内容はもちろん、適正な時間を判断する基準になります。
 スピーチを頼まれる場合、「だいたい5分くらいでお願いしたいけど、時間は気にしないで」などと言われることがあるかもしれません。しかしそれを真に受けてはいけません。披露宴にも理想的な進行時間というものがあります。それに沿うような形でスピーチをおさめるというのが、新郎新婦にとって何よりの思いやりになります。いくらお祝いの気持ちを伝えたいからと言って、長々と話すのはもちろん御法度ですし、できれば自分より前に披露されたスピーチが長いものが多く、終わりの時間が迫っていれば予定より早く終わってあげるほうがよい場合もあるでしょう。時間については、「いざとなれば短くできる準備をしておく」というのが望ましい形です。

 また進行表の中での自分のスピーチの順番もしっかり確認しておきましょう。一般的に、最初のほうのスピーチはまじめでどちらかというとオフィシャルな内容が多く、お酒が入ってきて場が和み始めた頃にはよりくだけた内容のものがしっくりくる場合があります。自分のスピーチだけ考えていればいいように思われるかもしれませんが、新郎新婦をお祝いする会ですから、彼らが気持ちよく過ごせるような配慮をしてあげるとよいでしょう。

結婚式でスピーチを頼まれたら、まず何をすればいいのか?

* 心に届く話し方ルール *

自分のスピーチの順番を確認して、
内容を考える

松本和也(まつもと・かずや)
スピーチコンサルタント・ナレーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から株式会社マツモトメソッド代表取締役。
アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た! 生きもの新伝説」「NHKスペシャル」「大河ドラマ・木曜時代劇」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況など。
現在は、主に企業のエグゼクィブをクライアントにしたスピーチ・トレーニングや話し方の講演を行っている。
写真/榊智朗