3月期末に向けて、日経平均株価が7000円割れ目前にまで下落したことで、大手行は危機感を強めていた。含み損が増大し、自己資本比率規制に黄信号が灯り始めていたからだ。焦った大手行は、あの手この手で対応に当たり、どうにか危ない状況は脱した模様だ。その舞台裏を追った。
今年初め、旧財閥系の大手企業は、ある大手銀行から突然、融資の借り換えを断られた。
その銀行とは長年の付き合い。これまでわざわざお願いしなくても、あうんの呼吸でほぼ自動的に応じてくれていただけに、担当者はあわてた。
確かに、その企業が身を置く業界は倒産が増加するなど、厳しい環境であることには違いなかった。しかし、それは新興企業に限った話。この企業の経営には一抹の不安もなかっただけに、理由が定かではなかった。
幸い、同じ旧財閥系のメインバンクに肩代わりしてもらい急場をしのぐことができたが、「何を尋ねても明確な説明はなく、ただ『応じることができなくなった』と繰り返すばかり」で、担当者の怒りは収まらない。
この企業に限らず、昨年末から今年の初めにかけて、融資の借り換えに応じてもらえなかったり、融資を引き揚げられたりした企業が相次いだ。
しかも、これまでは銀行のほうから頭を下げて融資を申し出ていたような、つぶれる恐れのない優良な大企業が大半だった。
大手行が態度を豹変させた理由はただ一つ。銀行に課せられている自己資本比率規制をクリアできるか微妙な状況だったからだ。
自己資本比率は、自己資本をリスクアセットで割って求められ、国際業務を行なう銀行は8%が必須。三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループのように、米国でFHC(金融持ち株会社)の認可を取っている銀行は10%の維持が求められている。
世界的な金融危機に端を発した株価の急落や、不良債権の増加などによって分子の自己資本は大幅に毀損、昨年10月には、瞬間風速的に8%割れする大手行もあった模様だ。