だが、そこでさらに一歩踏み込み、日本人も驚くような「蘊蓄」を語れる人はそう多くはない。単にその場所を訪れたというだけでなく、事前に本を読んだり、作品を鑑賞したり、広い視野を持って多角的に情報を網羅していなければできないことだからだ。私の上海の友人は間違いなく、そんな知識人であり洗練された「旅の達人」のひとりだ。

「一体どこから、こんなに豊富な知識や蘊蓄が?」と驚くが、彼によれば、妻が日本のツイッターなどから情報を仕入れているという。中国では基本的に日本のツイッターは見られないが、日本滞在中はそれらのSNSを見て最新の情報を仕入れていた。

 彼自身も学者で、日本語もわかるから、情報の精度が上がるのは理解できるとしても、ここまで旅に関する文化レベルが高くなっていることに私は舌を巻き、自分の認識の古さを改めた。

日本食が大好きで
日本料理の味を極めたい

 一方、私が知る別の女性の友人も、やはり驚くほど深い知識を持ち合わせている。彼女の場合は料理や食材についてだ。杭州出身の女性(42歳)は会社経営者。レストランやセレクトショップなどを経営しているため、欧米にもよく買い付けなども兼ねて出かけるが、何よりも日本食が大好きで、旅行の際、日本料理の味を極めたいのだという。

 彼女がこだわるのは出汁(だし)だ。日本料理にはかつおや昆布などの出汁が欠かせないが、本格的な出汁を求めて、東京や大阪、京都などの老舗日本料理店を食べ歩いているという。

 彼女によれば、「有名店でなくても、出汁にこだわり、最高の出汁を使った丁寧な日本料理を出している店が日本にはごまんとある。稼ぐことが目的ではなく、お客様に喜んでもらうことが目的の小さな店…。目立たないところで丁寧な仕事をする日本人はすばらしい」と言う。