「フランス政府は、パリを、ブレグジット(英国のEU離脱)後の欧州最大の金融ハブにしたい」。去る7月11日、JPモルガン・チェースをはじめ多くのグローバル金融機関のトップを前にしたエドゥアール・フィリップ首相の発言です。この動きを、金融機関の誘致(ロンドンと世界から)と、その事業環境の整備(税制・労働法改革)の両面からお伝えします。(Nagata Global Partners代表パートナー、パリ第9大学非常勤講師 永田公彦)
実は金融大国のフランス、金融の都パリ
芸術、ファッション、食文化、高級ブランド、観光のイメージが強いパリですが、実は、次のように大陸欧州最大の金融センターの1つでもあります(データ:パリの金融センター化を推進するロビー団体パリ・ユーロプレイスへの取材並びに同団体資料より)。
・金融業は、国の基幹産業の1つ(関連ビジネス含め、120万人を雇用、3000億ユーロの市場)
・大陸欧州系の銀行で、総資産額上位10社のうち5社がフランス系(参考:ドイツ系1社、スペイン系2社、オランダ系1社、イタリア系1社)
・欧州証券市場監督庁が置かれる(欧州連合の専門機関)
・時価総額、取引額、上場企業数でトップの株式市場・大陸欧州最大の株式取引市場ユーロネクストを抱える(参考:取引量は、フランクフルト証券取引所を運営するDeutsche Bse AGの2倍)
・社債発行額が、大陸欧州全体の約50%を占有(参考:2位がドイツの13%)
・大陸欧州最大の店頭デリバティブ市場(2位のドイツに対し、金利分野で4倍以上、外国為替分野で1.6倍)
・アセットネジメント系金融機関による資産運用額が、大陸欧州全体の31%を占有(参考:ドイツ16%、イタリア8%)
・630ものアセットマネジメント系金融機関がパリに集中