「UKフィールドワーク報告」(前編:第19回、後編:第20回)に、さまざまな反響があった。先週、筆者は「霞が関」に招かれて、約90分間の意見交換の機会を持った。大学生の調査が「霞が関」の目にとまったのは痛快事だ。日本の閉塞した状況を打開するのは、棺桶に片足を突っ込んだ政治家や財界の老人ではない。若者は、自分たちには無理だと決め付けず、高い意識を持って、新しい日本を創る先頭に立つべきだ。
今回から政治の議論に戻りたい。野田佳彦内閣最大の課題は、税制改革である。筆者は、「政府税調の再構成」を民主党政権ほぼ唯一の成果と考えてきた(前連載第61回)。自民党税調の影響力を排除し、民主党議員の族議員化を防ぎ、自民党時代に取り組めなかった課題に一定の成果を出してきたからだ。だが、「税と社会保障の一体改革」は、政府・与党間の協議が始まると紛糾した。原案で「2015年から」と明示された増税時期は、「2010年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げる」と曖昧な表現になった。今回は、税制改革が実現するのかを考える。
小選挙区制導入と自民党政権末期の
「歳出歳入一体改革」
筆者は、野田内閣の税制改革を、この連載で取り上げてきた80年代後半の「政治改革」以降の約20年に渡る日本政治の潮流の中に位置づける(前連載第31回)。
94年の「小選挙区比例代表並立制導入」は、日本政治にさまざまな変化をもたらした。小選挙区制下では当選者が各選挙区1人になるため、中小政党が衰退し、自民党・民主党の二大政党制が完成した。また、選挙では党の公認を得ることが決定的に重要となり、党執行部の「公認権」「人事権」が強化され、派閥の求心力は失われた。
そして「政策本位の政治」も実現した。「郵政民営化」への賛否が最大の争点だった2005年総選挙、「マニフェスト選挙」と呼ばれた2009年総選挙は、実は「政策選択」の意味合いが大きかった。逆に、当選するために地元へ利益誘導することはほとんど無意味となった。