2011年8月31日(水)~9月9日(金)に、立命館大学政策科学部の「研究入門フォーラム」というプログラムの一環として、学生16人とUKフィールドワークを行った。これは学部2回生を対象に、フィールドワークを実際に体験させるプログラムだ。私は「UKプロジェクト」を担当し、ロンドンとリバプールへ学生を引率した。前回に続き、その報告の後編をおくる。
近頃、「円高」「産業空洞化」を前提として、そのメリットを生かすべきとの論調が出てき始めた。「若者の海外就職」という問題意識を持つ人もいるようだ。だが、それは日本企業の海外進出の合った人材の「国際化」にとどまり、世界のジョブマーケットの現状からトラック3周は遅れている。私が「学生は海外で就職できる実力を磨け」と論じたのは2010年4月(前連載47回)。現在の「英国プロジェクト」の問題意識はもっと先に進んでいる。本当に深刻なのは、日本の大学生が外資系「グローバル企業」に就職する「国際競争力」を身に着けていないことだ(第19回)。
「オープンな英国の勝利」と
「UK社会構造化モデル」
英経済紙「The Economist」で「新興国企業と英国:新しい特別な関係」という記事を見つけた。記事の内容を要約する。
《新興国は、自国の政治的リスクを避けるために英国市場に積極的に投資する。インドのタタ財閥は、コーラス(旧ブリティッシュ・スティール)、ジャガー・ランドローバーなどを総額150億ポンド(約1兆8000億円)で買収した。新興国からの投資で、英国市場の規模は急拡大している。これは、米国に比べて規制が少なく、企業買収が簡単なオープンな市場だからだ。また、新興国にとって、英国のブランド力と高度なノウハウ・知識の蓄積も大きな魅力的だ。その結果、新興国に買収されても、英国企業の本社・工場は国内に留まっている。英国と旧植民地である新興国と「新しい関係」は、「オープンな英国」の勝利を示すものだ。》