顧客体験の改善をデザインの力で行う

 IBMがデザインシンキングを導入するきっかけになったのは、2012年に、ジニー・ロメッティ会長兼社長兼CEOが、IBMデザインの新設を宣言したことによる。

IBMが本気で取り組む<br />「デザインシンキング」の現場IBMデザインのフィル・ギルバートゼネラルマネージャー。ソフトウェア製品にデザインシンキングの手法を導入する陣頭指揮を執る

「当時のロメッティ会長兼社長兼CEOは、IBM全体が、顧客体験の改善にフォーカスすべきだと指摘した。そして、その中心にデザインシンキングを置くべきだと語った」と振り返るのは、IBMデザインのフィル・ギルバートゼネラルマネージャー。同氏は、IBMが2010年に買収したLombardi Software社のプレジデントを務めており、IBMに移籍後、約2年間に渡り、デザインシンキングの手法とフレームワークを取り入れ、これを45種類の製品に展開した。これらの製品は、2年後にはマーケットシェアを2倍へと拡大。業務効率を30%も改善する実績をあげた。

「顧客体験を改善するためには、市場の動きにあわせたスピード感を持つこと、市場でなにかが起きたら、それにあわせて自らが変化すること、そして、アジャイルで進めるといった手法が求められており、そのためにはデザインシンキングを用いる必要があった。顧客体験を最大化するには、デザインシンキングを導入しなくてはならなかった」というわけだ。

クラウドサービスの改善には
デザイン志向が不可欠に

 いまでは、IBM製品およびサービスのほぼすべてが、クラウドで提供され、短期間にアップデートを繰り返している。こうした変化に対応した開発体制を実現するには、デザインシンキングが不可欠だ。常に顧客の声を聞き、それを実現するためにスピード感を持って対応し、アジャイル型のビジネスモデルで開発し、製品やサービスをリリースするといった繰り返しを行うからだ。

 デシタライゼーションが進展する市場で生き残るのに不可欠な仕組みが、デザインシンクングによって確立されているといえる。

「いま、多くの企業が、我々が2012年に抱えていた課題と同じ状況に遭遇している。デジタル化の進展などにより、顧客や企業を取り巻く環境が大きく変化するなかで、顧客の体験を重視することが不可避になってきている。それを実現するために、デザインシンキングへの関心が高まっている。いまは、IBMの知見を提供することもできる」と語る。