デジタル決済サービスを提供するPayPalは、日本での事業を加速する。「中小企業・スタートアップ」「訪日観光客」「モバイル」を注力領域に位置づけ、日本における加盟店の拡大などに力を注ぐ一方、デジタルグッズを販売するオンライン事業者などへのサービス拡大、アクティブコンシューマユーザーの利用者数増加と利用率の向上、新たな付加価値サービスの提供などにも乗り出す。

PayPal Pte.Ltdの曽根崇・東京支店カントリーマネージャーは、「日本は大きなビジネスチャンスを持った市場。今後、日本におけるPayPalの成長曲線の角度が、これまでとは大きく変わる」と語る。元祖FinTech企業の1社と言われるPayPalの日本におけるこれまでの取り組みと、これからを聞いた。

――PayPalは、1999年に米シリコンバレーで創業し、デジタル決済サービスを全世界に普及させる役割を担ってきました。日本では、2010年にオフィスを開設したわけですが、いま、日本における事業は、どんなフェーズにあるといえますか。

PayPal Pte.Ltdの曽根崇・東京支店カントリーマネージャー

曽根 PayPalが2010年に日本オフィスを開設した際には、グローバルでの決済プラットフォームを持つプレゼンスを生かし、「越境EC」にフォーカスして事業を開始しました。これは、日本の事業者が海外の消費者に向けて販売する際の決済手段を提供するものであり、PayPalにとっては、フェーズ1といえる段階です。

 続いて、国内間の取引に対応すべく資金移動業としての登録を完了し、ビジネスを展開し始めました。ここでは、ソフトバンクとのジョイントベンチャーも設立し、日本でのPayPalの利用を加速する体制構築に乗り出しました。これがフェーズ2です。そして、現在がフェーズ3です。ここでは、ソフトバンクとのジョイントベンチャーを解消し、同時に、我々のコアとなるオンライン決済に事業を集中し、ビジネス成長につなげていく段階にあります。

――日本でのデジタル決済市場の状況をどう捉えていますか。

曽根 デジタル決済の市場は、マクロレベルでは、まだ浸透し切れていないと判断しています。たとえば、日本の国民消費支出は約300兆円に達しますが、そのなかでクレジットカードによる決済が占める構成比は約15%。45兆円強の規模です。欧米での構成比は50%程度に達していますから、日本の構成比は圧倒的に低い水準になっています。これをオンラインの世界に適用しても、クレジットカードによる決済の比率は、日本では5割程度。欧米では、クレジットカードとデビットカードをあわせて8割以上を占めていることに比べると、日本のマーケットはデジタル決済の浸透率は、まだまだ低いのが現状です。

 そのなかで、2つのトレンドがあります。1つは、オンラインショッピングへの移行が促進されているという点。日本の全体の消費の成長率は1%程度ですが、オンラインショッピングの成長は2桁成長を遂げています。そして、もう1つは、これに伴って、デジタル決済が浸透しはじめているという点です。徐々に欧米型のマーケットにシフトしつつあるといえます。ApplePayやLINE Pay、Stripeなど、日本においても、デジタル決済を取り巻く動きが活性化しているのは、それを裏付けるものだといえます。この1年、2年でデジタル決済が浸透するスピードはさらに加速すると見ています。