目標ありきの「計画経済」は
顧客や社会のことを考えない

 ソ連崩壊後、ロシアになってからも国営企業の腐敗はなかなかなくならなかった。代表的なものが、国内企業保護の観点で安く入手できた原料を海外へ横流しする不正だ。

「企業経営者にとっては原材料を生産にまわすより、西側市場に横流しすることが手取り早く利益を上げる手段だ」(日本経済新聞1993年3月9日)

 なぜこうなってしまうのかというと、「計画経済」が骨の髄までしみついている弊害で、「自社の利益を得る」という「目標達成」だけしか見えなくなってしまい、自由主義経済の基本ともう言うべき「顧客」や「社会からの信頼」なんてところにまで考えが及ばないのである。

「目標達成」ばかりが強調されるのは、神戸製鋼もソ連も同じ、そして、これこそが、品質検査のデータを改ざんするという「顧客への裏切り」を、神戸製鋼が長く続けられた最大の原因であるようなが気がしてならない。

 もちろん、この件に関して、神戸製鋼の経営陣などに「みなさん、ソ連の計画経済の影響を受けてましたか?」なんて質問状を送ったわけではないので、以上はすべて筆者の仮説であることはお断りしておく。

 ただ、先週の記事でも述べたように、「世界一」という目標を掲げた企業がことごとくおかしなことになっている、というのは紛れもない事実だ。東京電力、電通、東芝など近年、不祥事で世間を騒がせている企業は多分にもれず、日本の鉄鋼業界が「世界一」を謳いはじめたのと同じ時期、なにかしらの分野で「世界一」を達成し、そこからなにかに取り憑かれたようにその座に固執してきた。

 なぜ日本企業は「世界一」を謳いたがるのか。そしてなぜ、そのような「世界一企業」に限って、手抜き工事をした建物が耐え切れなくなったように、このタイミングで「崩壊」しているのか。

 このあたりの現象について実は数年前から興味があって、調査を続けており、近くそれらをまとめて出版する。興味のある方はぜひ手にとっていただきたい。

 いずれにせよ、神戸製鋼の顧客や社会に対する裏切りが「40年以上」にのぼっていたとしたら、これはもはや一個人や一部署がどうこうという問題ではなく、「企業文化」というレベルを超越した、旧国鉄の「日勤教育」に近いものがなされていたのではないかという疑惑も出てくる。

 神戸製鋼の徹底的な社内調査を期待したい。