死ぬまで働き、
失敗談を積極的に聞き、話せ!
大塚:定年後にそうならないために、30代とか40代ではどのようなことをすればいいのでしょうか? たとえばもっと趣味を広げるとか、仕事をもっと頑張るとか、そのあたりはどうでしょうか。
川北:仕事に関しては、30代、40代は脂の乗っているときだから、やっぱり頑張るしかないと思います。大塚さんの『30代を後悔しない50のリスト』にも詳しく書かれていますけど、とにかく成果を出すのが必要ですね。この辺については、自分で書いた本の中でもいろいろ書いているけれど、定年の話が出たから今回言っておきたいのは、後悔しない人生を送るためには、50代になったら「もう会社のことは考えるな」ということです。
会社の仕事はもう流せと。流し仕事をやれと。それより、もう老後のことを考えるのが大切なんです。だって、60歳で定年になったら、死ぬまでに20年もあるんですよ。いまは第二の人生ってものすごく長いから、そのことを考えたほうがいいんですよ。
ただ、誤解されたくないのは、流すのはあくまで「会社の仕事」だということです。僕は、『男は死ぬまで働きなさい』という著書まで書いているけれど、「仕事」は死ぬまでしたほうがいいと思うんですよね。その仕事は何でもいいんです。ボランティアでも何でもいいけど、収入よりも「仕事」を持つことが、その人の人生を変えていくんですよ。定年間近になって急いで探してももう遅いから、50代になったらそうした「仕事」を見つけることが大切です。
大塚:やりがいとか、自己効力感というんですかね。「仕事」をしているだけで、自分の価値を認めることができるし、余計なことに文句ばかり言わなくなる。
川北:そうなんですよ。仕事が週に2回でも3回でもあると、やっぱり外に出て行くでしょ。これはものすごく大事なことなんです。人間、外に出るクセをつけないと、ずっと家に閉じこもって家の周りをうろうろするから、「迷惑だ」と奥さんに言われてしまう(笑)。何でもいいから仕事を持っていると、悪態をついたりすることなく、人生に前向きになれると思うんですよね。
大塚:何歳になっても仕事をしよう、というのは納得です。そうしたご意見は、成功者や失敗者の経験談からも伺えますが、川北さんのご著書『人生はすべて「逆」を行け』では、成功したければ失敗者の話を聞けとおっしゃられていますね。
川北:そう、失敗した人の話のほうがずっと役立つ。これは大塚さんの本もまったく同じですね。もっと言えば、僕は「自ら失敗談をしゃべれ」とも思う。さらに、人間関係というのは、失敗談をしゃべったほうがうまくいくんですよ。人間関係上、一番聞きたくないのは他人の自慢話なんですよ。人の自慢話なんて聞いたっておもしろくもない。勝手にしろって言いたくなる(笑)。
大塚:他人の自慢話は、ただ聞いているだけで質問もできませんよね。だから、聞きながら学ぶということがほとんどできない。失敗談には、反面教師として自分にフィードバックすることができるものだと思います。
川北:そうそう。実際に失敗談のほうが参考になるんですよ。こういうことをして、こうやって失敗したとなると、聞いているほうも焦りをもって聞けるから、必死に参考にしようとする。成功話はつい「ふーん」と聞いてしまうけど、失敗話はそうもいかないですからね。同じ失敗は二度としないという意識も働きますよね。
大塚:僕の『30代を後悔しない50のリスト』も『40代を後悔しない50のリスト』も、諸先輩の失敗や後悔をもとに書いています。逆説的だけど、実はそのほうが成功に近いと言えると思います。本当に役立つのは、スーパー経営者の成功話より、身近な人の失敗話のほうだと。これは、この2冊でもずっと書いていることですし、その発想によって自分が大きく変わった経緯も本で紹介しています。