後悔のない30代を送るために必要なことは何なのか? ライフ&ビューティディレクターとして活躍する渡辺佳恵さんと、『30代を後悔しない50のリスト』の著者・大塚寿さんが語る、30代で身につけたい仕事への取り組み方と目標設定について。
30代で訪れたチャンスを
いかにしてつかんだか
大塚:渡辺さんは、2001年に小学館『CanCam』の嘱託編集者から、同誌初のエディトリアルディレクターに、2002年には初のファッションディレクターに就任されていますが、そのチャンスはどのようにして訪れたのでしょうか?
渡辺:当時、『CanCam』の売れ行きはあまり芳しくなかったんです。そこで、『CanCam』を抜本的に改革したいという編集長の考えのもと、その突破口としてファッションディレクターをやってみないか? とお声をかけていただいたのが私でした。編集長からは「とにかくどうやったら『CanCam』が売れるかだけを考えてほしい。ひたすらそれだけを考えて、いろいろ改革して『CanCam』を売れる雑誌にしてほしい」って言われたんです。
私は学生のころから編集部に出入りして、ファッション誌ライターとして活動してきました。それ以来、10数年の間ずっと『CanCam』に携わってきたなかで、誌面全体を見渡してみると、「もっとこうしたい」と思うことがたくさんあったんですよね。やりたいことがたくさんあったから、ファッションディレクターもできると思ったんです。つまり、もっとこうすればいいのにとか、もっと『CanCam』はこうあるべきだとか思ってきたことをかたちにしたら、きっとうまくいくはずだと思いました。それで、編集長のご提示をお受けしたんです。迷いはありませんでしたね。
大塚:私の新刊『30代を後悔しない50のリスト』でも、1万人の後悔リストの中に「チャンスにすぐ対応すればよかった」という項目があります。チャンスにすぐに飛びつくべきだというのは誰もがわかっていますが、アタマではわかっていても、実際には簡単ではないですよね。渡辺さんの場合、何かチャンスの気配というのはありましたか? これは私が待っていたチャンスだという前兆みたいな。
渡辺:雑誌って売れなくなると、いろんなことをとにかく試行錯誤してみるんですよね。いいときって、人は物事を変えようとはしない。でもダメなときって、人はいろいろと変えようとしますよね。あの時の『CanCam』もそうでした。だから、そういう話が誰かにあってもおかしくはない状況だな、とは思っていました。
けれど、ただの一介のライターだった私が、ファッションディレクターで契約しないかと言われたときに、結果が出せないかもしれないし、前例もないことなので怯んでしまって、断っていたとしたら……。収入も不自由ない程度はありましたし、なにもわざわざ荒波に行くこともなかったんですよね。でもやってみたい、やれる気もすると思って飛び込んだことは、結果としてすごくよかったなと本当に思っています。あのとき、チャンスにすぐに対応した自分の決断に、後悔はありません。