「戦場で何を身に着けるか」は
極めて重要な問題である

 たとえば衣服ひとつとっても「戦場で何を身に着けるか」は極めて重要な問題である。炎や爆発、銃弾、レーザー、びらん剤や炭疽菌などなど、あらゆるものから身を守ってくれる制服でなければならない。こうした研究を行っているのが「ネイティック」の通称で知られるアメリカ陸軍の研究所だ。ネイティックが開発したもののひとつに、蓮の葉の表面の構造をヒントにつくられ、あらゆる汚れをはねのける「スーパー撥水コーティング」がある。用途はもちろん化学兵器や生物兵器から布地を保護するためだが、著者の取材に対して研究者がふと口にした「自分できれいになる下着」という言葉のほうが、むしろ私のような素人には響く。軍事テクノロジーによって生まれ一般の日用品になったモノは多いが、「汚れないパンツ」も将来は当たり前のように使われるようになるかもしれない(というか個人的にぜひ欲しい)。

 このような最先端の研究の紹介もさることながら、本書の魅力はなによりも研究者たちの試行錯誤にスポットを当てているところにある。一見くだらないと思われるようなテーマであっても彼らはクソ真面目に格闘するのだ。だからこそ、その悪戦苦闘ぶりに読者はくすりと笑ってしまうのである。

「戦場で何を身に着けるか問題」でいえば、赤い下着伝説が傑作だ。芸能界では藤原紀香が愛用し、ストリートではおばあちゃんの原宿こと巣鴨を代表するセレクトショップ「マルジ」が年中推している、あの赤パンツである。20世紀のはじめ、インドに駐留していたイギリス軍将校たちが、赤い布を帽子の内側に縫いたところ、灼熱の太陽から解放されたように感じたらしいという報告が、アメリカ軍の幹部のもとにもたらされた。