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今やアートもネットで“買う”時代!?
超セレブが出資する招待制サイト
「Art.sy(アーツィー)」の正体

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第170回】 2011年11月9日
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 好きそうな楽曲を同様のアルゴリズムで探し出すミュージック・ゲノム・プロジェクトというのもあるが、それを元に音楽サイトのパンドラを立ち上げたジョー・ケネディーもアドバイザーとして参加。他のアドバイザーには、ニューヨークの有名なギャラリー・オーナーであるラリー・ガーゴジアンもいる。オークションハウスとして知られるクリスティーズの元重役が、アーツィーのCOO(最高執行責任者)だ。

 アーツィーには、すでに世界中の有名なギャラリーが参加していると見られているが、ユーザーはこのサイト上で買い物をするわけではない。何百万ドルもする作品をクリックして買い物かごに入れ、そのままチェックアウトというのは、いくら金持ちのアート界でもまだ時期尚早。

 その代わりにアーツィーは、アート作品のデータベース兼紹介サイトという位置づけで、買いたい人と売りたい人を結びつけるのである。サイト上では作品を持つギャラリーと買い手を仲介し、実際の売買は生の世界で成立するのだ。縁結びという点ではデートサイトのようなものだが、インターネットを閉じられた方法で連絡網のように利用するものとして新しいところがある。アーツィーは、作品が売れるとその売上の利益からコミション(10~15%)を徴収するという。

 これまでインナーサークル内だけで取引されてきたアートの世界にこうしたしくみが機能するのかについては、意見が賛否両論に分かれている。アートの新たな若い買い手が増えているところで、潜在的な客を引き寄せるのに有効と歓迎するギャラリーもいれば、アート作品に対峙した際のコレクターの好き嫌いは、アルゴリズムでは解明不能とする人々もいる。

 普通ならばインターネットのこうした仕組みで、秘密に満ちた世界もオープンになることが期待できるのだが、ことアート売買の業界に関してはインナーサークルをさらに強化する方向へ働く可能性もある。実はそういう使い方こそ、インターネットの次世代の利用方法かもしれない。


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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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