シビック、ハチロク、GT-R……
短命だった日本カルチャーブーム
今年も、世界最大級と称される自動車アフターマーケット見本市「SEMAショー」(米ネバダ州ラスベガス・コンベンションセンター/2011年11月1日~4日)が開催された。
Photo by Kenji Momota
その会場で目立ったのは、GMシボレー「カマロ」やフォード「マスタング」の改造車、リフトアップ(車高を上げること)した大型SUV改造車などのアメ車たちだ。会場内の各展示ブースの関係者やバイヤーなどの入場者は、40~60歳代のアメリカ人男性が主流。アメリカで一時、社会現象化した、若者向けの「ジャパニーズ・チューニングカー」たちの存在感は極めて薄かった。それらは、数台が会場外の展示スペースに並ぶ程度で、「新種の若者カルチャー」と称された以前の勢いと比較すれば、現状ではその存在は「なきに等しい」状態だ。
一時はトレンドとしてアメリカに根付くかに思われた「ジャパニーズ・チューニングカー」。だが、あれから十余年、そのブームは完全に消滅してしまったのだ。当時、西海岸LA周辺ではシャコタン(車高短)のホンダ「シビック」、漢字で「暴走族」と書かれたステッカーを貼ったトヨタ「AE86 カローラ・レビン」(通称ハチロク)、日本から中古輸入された右ハンドルの日産「R32/R33/R34 GT-R」などが存在感を増していた。
また、同分野の関連イベントも盛んになり、競技としての「インポートカー・ドラッグレース」、展示会の「(俗称)ショー」等が、LAを発信源としてアメーバのように全米に広がっていった。そして、この分野だけを専門に扱う米自動車雑誌やウェブサイトが急増した。
自動車メーカーでもこのブームに便乗し、三菱が「ランエボ(ランサーエボリューション)」、富士重工がスバル「WRX/STI」を市場投入。両社は当初、「日欧市場とは違い、WRC(世界ラリー選手権)などのラリー人気が極めて低いアメリカで、ラリー車イメージの強いスポーティモデルは売れない」としていたが、「ジャパニーズ・チューニングカー」ブームの波に遅れまいと戦略を変更した。
また小売分野では、オートバックスが全米展開を狙ってLA近郊に旗艦店をオープンした。さらに、こうしたアメリカでのトレンドは映画化もされた。それが、「First and Furious」(邦題:ワイルド・スピード)だ。また日本ではこうした一連の米国発ブームを逆輸入し、ホンダ車を主流とした「スポコン」(スポーツ・コンパクト)ブームを煽った。