【ストック】
効率的に知識を引き出せるシステムを作る

 そして最後に、このようにして抽象化・構造化された知識は、いつでもこれを引き出せるように、しかるべきファイリングシステムにストックしておく必要があります。なぜかというと、インプットされた情報のほとんどは、いずれ必ず忘れるからです。

 独学によって得た知識には、「すぐに役立つ」というものもあれば、「ものすごく面白いけれども、いつ役に立つのかわからない」というものも多い。そして、ここがポイントなのですが、「その人ならではのアウトプット」というのは、むしろ後者の「ものすごく面白いけど、いますぐなんの役に立つかはわからない」という情報が元になっていることが多いのです。

 いつ役に立つかわからないということは、逆に言えば、ある日突然にその知識が必要とされる局面が予想外にやってくるということですから、状況に応じて効率的にストックした知識を引き出せるシステムを作っておくことが重要になります。

 やることはそんなに難しいことではありません。なんらかのデジタルデータとして、抽象化・構造化されたデータを記録しておき、必要に応じて検索やタグから、過去の記録を引き出せるようにしておけばいいのです。

 私の場合は、執筆もワークショップの素材も、ほとんど移動しながら作成しているため、複数のデバイスから作業できるようにエバーノートを用いていますが、サービス自体はどれを用いてもいいと思います。

 ここまで、独学システムを構成する四つのモジュール、すなわち「戦略」「インプット」「抽象化・構造化」「ストック」について、その概要を説明してきました。『知的戦闘力を高める 独学の技法』では、これら四つのモジュールについて、具体的な取り組みの内容を詳説しています。ご興味のある方はぜひ書籍をご一読ください。

知ることがむつかしいのではない。いかにその知っていることに、身を処するかがむつかしいのだ。
――司馬遷『史記列伝』